新しい水素検知システムの開発
大日本印刷株式会社(DNP)と横浜国立大学が共同で開発した「水素検知システム」は、水素漏洩の早期発見を実現する革新的技術です。このシステムは、水素に特異的に反応するセンサーとRFID(無線周波数識別)技術を組み合わせており、クリーンエネルギーの利用が進化する中で、特に注目されています。
開発背景
水素はその高いエネルギー効率とCO₂を排出しない性質から、クリーンエネルギーとしての需要が高まっています。日本国内では、水素エネルギーに関連する市場が2030年度までに6,633億円に成長する見込みです。しかし、水素は都市ガスに比べて漏れやすく、発火リスクも高いことから、取り扱いの安全性が非常に重要です。従来のガス漏洩検知器は高温での動作や電池を必要とし、これが着火源となる恐れがありました。こうした問題を解決するために、DNPは新たにRFID技術と水素検知膜を活用したシステムの開発に挑みました。
システムの特長
1. 高い安全性
新たな水素検知システムでは、センサーが電源や加熱を必要としないため、着火リスクを大幅に低減できる点が特徴です。これにより、安全性が確保されているだけでなく、早期の漏洩検知が可能となります。
2. フレキシブルな設置
このシステムで使用されるセンサーは、フィルム状に制作されており、多種多様な施設に簡単に適応できます。設置が容易なため、時間やコストの削減にも貢献します。水素製造プラントだけでなく、水素ステーションや水素自動車など広範囲な施設での利用が可能です。
3. 遠隔監視機能
RFID技術を活用したこの水素検知システムは、複数のセンサーが同時に動作し、離れた場所からの監視も実現しています。広い施設での一元管理が可能になり、漏洩事故を未然に防ぐための手段となります。さらに、小型リーダー/ライターを持つことで、迅速に作業員に無線でアラームを通知し、高い安全性を保証します。
今後の展開
DNPはこの技術を水素製造プラントや関連システムベンダーに提供し、2030年度までに30億円の売上を目指しています。また、クリーンエネルギーの普及に貢献する製品やサービスのさらなる開発を通じて、持続可能な脱炭素社会の実現に向けた取り組みを強化していきます。
さいごに
DNPと横浜国立大学が手掛けた水素検知システムは、安全性の向上と運用の簡便さを兼ね備えており、今後の水素エネルギー活用における重要な技術となることでしょう。クリーンエネルギーの未来を形作るこの取り組みから目が離せません。