コダシップ、CHERIアライアンスにSDKを寄贈
2024年10月21日、ドイツのミュンヘンで、RISC-Vカスタムコンピュートのリーダーであるコダシップが、最新のCHERI用ソフトウェア開発キット(SDK)をコミュニティ利益団体であるCHERIアライアンスに寄贈したことが発表されました。この寄贈により、CHERIアライアンスはSDKをGitHub上で自由にダウンロードできるようにし、より多くの開発者がこの先進的な技術を活用できるようになります。
CHERI(Capability Hardware Enhanced RISC Instructions)は、ケンブリッジ大学とSRI Internationalが共同で研究開発してきた高度なセキュリティ技術です。このプロジェクトは、システムのセキュリティ向上を目指すもので、DARPAやUKRIなどから資金提供を受けています。2023年には、コダシップによって初めてライセンス可能なプロセッサとして市販化されました。
CHERIの特長と可能性
CHERIは、命令セットアーキテクチャ(ISA)を拡張し、メモリアクセスを精密に制御することを可能とします。これにより、バッファオーバーフローやメモリ破壊といった一般的な脆弱性の発生を防ぎ、より安全なアプリケーションの開発を支援します。ただし、CHERI技術を活用するためには、対応するソフトウェアツールやパッケージが必要です。特に、コンパイラは新たに導入された拡張命令を活用したアプリケーションを生成することが求められます。
コダシップは、他のCHERIアライアンスメンバーと協力し、オープンソースプロジェクトの上にこれらのツールを構築しました。このSDKを寄贈することで、RISC-VでCHERIを活用しようとする開発者にとって、無制限にアクセスできる環境が整うことになります。
産業界からの期待
コダシップの最高経営責任者(CEO)、ロン・ブラック氏は、「すでに多くの政府機関や組織が、CHERI技術が持つ守る力の可能性を見出しています。この技術を実際のシステムに迅速に展開することが求められています。」と述べました。さらに、「私たちはLinuxに完全に対応したSDKを実装するために多大な努力を注いできました。このSDKを誰でも使えるように公開することで、CHERIとRISC-Vコミュニティにとって大きな財産になると信じています」と、展望を語りました。
CHERIアライアンスのディレクター、マイケル・ハルソール氏も、「アライアンスは、CHERIセキュリティがハイテク製品で広く活用されるよう、コラボレーションとオープン性に重きを置いています。コダシップによるSDKの公開は、CHERIのRISC-V標準化に向けた重要な一歩です。今後、学界、産業界、政府が協力することで、より安全な電子機器の未来を築いていけると確信しています」とのコメントを寄せています。
SDKの内容
今回寄贈されたCHERI RISC-V SDKには、以下のようなコンポーネントが含まれています:
- - LLVM17ベースのC/C++コンパイラとツールチェーン
- - CHERI-RISC-V Sailモデル
- - QEMUオープンソース・エミュレータ
- - OpenSBI RISC-Vスーパーバイザー・バイナリ・インターフェース実装
- - Das U-Bootブートローダー
- - Linuxカーネル6.10
- - FreeRTOS
- - GNUデバッガ
- - Yocto Linuxビルドシステム
- - Busyboxをベースとした基本的なユーザー空間環境
CHERIアライアンスのGitHubからSDKにアクセス可能です。
コダシップについて
コダシップは、システム・オン・チップの開発を行う企業で、プロセッサ技術を通じて製品の差別化と競争力の向上を目指しています。ユーザーは、自社の製品においてオープンなRISC-V ISAの可能性を活かしています。そのデザイン自動化ツールCodasip Studioとカスタマイズ可能なプロセッサIPシリーズは完全なオープンアーキテクチャのライセンスモデルを提供しています。
CHERIアライアンスについて
CHERIアライアンスは、CHERIセキュリティ技術の採用を促進するコミュニティ利益団体であり、業界全体でのCHERIの活用を推進しています。ケンブリッジ大学およびSRI Internationalによる10年以上の研究を基に、CHERIはメモリ保護とソフトウェアの区画化によってシステムセキュリティを強化します。アライアンスは、様々なコンピューティングプラットフォームにわたるCHERIの標準化と実装を目指しており、詳細は公式サイトで確認できます。
協業を通じて、より安全な社会の実現に向けて取り組むコダシップとCHERIアライアンス。今後の進展から目が離せません。