91歳の小説家、阿刀田高の「最後」
日本文学の巨匠、阿刀田高(あとうだ・たかし)氏が91歳にして、最後の小説集『掌より愛をこめて阿刀田高さいごの小説集』を5月27日(水)に刊行することが発表されました。これまで900篇以上の作品を世に送り出してきた彼の生涯の集大成とも言えるこの一冊は、新潮社からのリリースです。
本書には、わずか原稿用紙10枚程度に凝縮されたショートショートが36篇収められており、それぞれが意外性に富んだエンディングで読者を楽しませてくれることでしょう。1980年代から今日に至るまで、阿刀田氏は変わらぬスタイルとして鉛筆と原稿用紙を使い続けてきました。
執筆への情熱と終わりを見つめる視線
本書の執筆に際して阿刀田氏は、『自分の手自体が小説のアイデアを持っている』と語り、『年齢を重ねたことで良いアイデアはなかなか湧かなくなった』と正直な心情も明かしています。しかし、彼の作品に対する思いや情熱は、年々増しているようです。
彼はこう結論づけています。「良い水準に達した小説を読者に届けたい」という思いは変わらないと、最後の力を振り絞って挑戦しました。その言葉には、作家としての誇りと読者への感謝が込められています。
この小説集には、1993年に雑誌に掲載された作品から、90歳を迎えた昨年までに執筆された物語が収められており、名手ならではの技巧と遊び心を存分に感じられる内容となっています。
エッセイ集『90歳、男のひとり暮らし』の成功
また、阿刀田氏は昨年9月に刊行したエッセイ集『90歳、男のひとり暮らし』も話題を呼んでいます。軽妙なタッチで、高齢男性のひとり暮らしに役立つ知恵やユーモアを描いたこのエッセイは、刊行以来、3万5千部を突破し、各メディアで取り上げられ続けています。
この書籍では、日々の暮らしの中での知恵や楽しみが紹介されており、介護に入った妻を想いつつも独自のライフスタイルを維持する彼の姿勢が描かれています。
阿刀田高の旅路の終焉
作品に詰まったアイデアとユーモアが、短い原稿の中にどれほどの驚きを生み出すのか、読者は本書を手に取ることで感じることでしょう。名手が届ける最後の作品となる本書は、往年のファンはもちろん、新たに阿刀田氏の作品と出会う読者にとっても記憶に残る一冊となることでしょう。
阿刀田高氏は、1935年東京に生まれ、国立国会図書館に勤務しながら文筆活動を行ってきました。デビュー作『冷蔵庫より愛をこめて』の発表から数十年にわたり、多くの賞を受賞し、現在も文化功労者として日本文学に寄与しています。91年の人生を経て、彼が見せる最後の幕は、どのようなストーリーで締めくくられるのか、期待が高まります。
最後に、阿刀田氏は「終わり」を恐れず新たな創作を続けたいと語っています。エッセイや新たな表現への挑戦はまだまだ続くと力強く宣言しており、今後の彼の活動にも注目です。