乗富鉄工所が導入した新たな挑戦「未来投資型人事制度」とは

乗富鉄工所が挑む新たな人事制度の改革

福岡県柳川市に拠点を置く株式会社乗富鉄工所は、革新的な人事制度「未来投資型人事制度」を導入しました。これは、社員一人ひとりの「やりたいこと」に会社が積極的に投資するという全く新しい試みです。これまでの年功序列型の評価から脱却し、未来に目を向けた制度改革が始まりました。

組織文化の根本からの見直し

乗富鉄工所は、過去の人事制度に関して若手社員の離職や、年功序列による不平等感に苦しんでいました。それでも、デザイナーや大学との連携を深めることで新たなプロジェクトが生まれ、多くの若者が集まってくるようになりました。この中で、メンバーそれぞれの「やりたいこと」に着目し、働く意味を再定義する必要性が高まってきました。

明確なビジョンを持ち、自分を表現できる環境作りが求められる中、同社は全役職を廃止してフラットな組織体制に移行することを決定しました。2025年11月から始まるこの新制度は、社員の挑戦意欲や将来の貢献を重視し、評価の軸を過去から未来へとシフトさせるものです。

投資額を自ら提案

新しい人事制度では、社員はこの1年間で挑戦したいこととそのための昇給額を自ら提案することが求められます。会社側はその内容を基に投資を決定する仕組みです。このプロセスは、社員に自らの未来に責任を持たせると同時に、会社もまたその未来に向けて投資を行う重要な機会となります。

未来投資会議の重要性

2025年9月には、初回の「未来投資会議」が開催されました。ここでは全社員が自分の挑戦したいことと昇給額を提案し、その後、各部署の「サポーター」が代表としてプレゼンテーションを行いました。この会議は単なる昇給の議論ではなく、同僚同士が互いの希望や目標を理解し合い、信頼を深める場となったのです。

特に、議論の中で出た社員同士の驚きの声や、思いもよらないアイデアに感動した場面も多く見受けられました。そこで議論された内容は、職人気質なメンバーの積極的なサポートや、成長に向けた意欲の重要性を再認識させるものでした。

新しい人事制度への期待

この新しい人事制度について、同社の人事担当者である吉田悠氏は、「これまでの評価制度は一方通行でしたが、この制度では社員が自らの意志を持って参加することで、秘められた思いを引き出す機会が増えたと感じています」とコメントしています。

一方で、代表取締役の乘冨賢蔵氏は、「私たちの制度は、固定観念に囚われず、職人が営業をするなど、個々の可能性を拡げていくことを重視している」と説明しています。これは、社員が主体的に働くことで、柔軟な組織へと進化する力を持つと信じているからです。