日本と中国の友情を描くミステリー
2026年1月9日に発売される『最後の皇帝と謎解きを』は、『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作として注目を集めています。この作品は、中国の紫禁城を舞台に、元皇帝と日本人絵師の友情を描いた連作短編ミステリーです。著者である犬丸幸平氏の経歴や物語の背景、そしてそのテーマについて掘り下げていきます。
紫禁城での出来事
本書の主なストーリーは、1920年の中華民国に設定されています。北京に住む日本人の一条剛は、元皇帝に水墨画の先生として雇われます。しかし、彼の本当の目的は、紫禁城に眠る本物の水墨画を贋作にすり替え、真作を売却することで清朝復興の資金を調達するというものでした。こうした裏事情が、物語を非常に緊迫感のあるものにしています。
登場人物である一条と元皇帝の間には、孤独感と友情が芽生え、さまざまな事件を解決しながら絆を深めていく姿が描かれています。この一連のストーリーには、犬丸氏が40ヵ国を旅した経験が反映されており、民族間の友好をテーマにしています。
高評価を受けた著者の着眼点
選考委員から高い評価を受けた本作。特に、「この時代のこの場所をピンポイントで選んだ着眼は素晴らしい」とされており、歴史ミステリーとしてもユニークな視点が得られると評判です。物語は、当時の紫禁城の状況を知らない読者にも親しみやすく、作品に引き込まれる要素が詰まっています。
人間の絆を描く
犬丸氏は、自身の旅の中で感じたことを元に、歴史の「勝者」の視点ではなく、体験せざるを得なかった人々への視点を尊重しています。「勝者の歴史の外側を描く」と語る彼は、その視点から物語を創作することに意味を見出しています。特に、宦官のように歴史に名を記さない人々にも、誇りや力が存在することを描きたかったとのことです。
物語の中に潜む哲学
作品を通じて、他民族間の友情や理解に関する深い問いかけがなされます。たとえば、「人が人を思う気持ちに民族の壁が存在するのか」といったテーマが込められています。このように、物語にはただのエンターテイメントを超えた人間の共感や理解、そして異なる文化に対する洞察が含まれています。
筋トレで培った集中力
犬丸氏は、朝の早い時間に筋トレをすることが彼の執筆に大きな影響を与えていることを明かしています。規則正しい生活と体づくりが、彼の創作活動においても効率よく集中できる要因になっているようです。特に、執筆中は自己管理が重要であり、その結果として物語が生まれてくるとのことです。
次回作への意気込み
犬丸氏は今後、歴史の中でもまだ描かれていない時代について挑戦したいと語っています。その新しい試みが、現代の人間に何かを伝え、理解の助けとして役立てることを願っています。この作品を通じて、読者は物語の背後にある人間の深い感情や友情を感じ取ることができるでしょう。
まとめ
『最後の皇帝と謎解きを』は、多彩なミステリーと感情豊かな物語が魅力の一冊です。友達がいない元皇帝と、日本人絵師の心のつながりが描かれた作品は、歴史小説のみならず、友情についても考えさせられる内容となっています。発売日が待ち遠しいですね。