公共建築賞特別賞受賞の2つの建物
公共建築賞は優れた公共建築を表彰し、その品質向上を目指す日本の重要な賞です。この度の第19回では、国立アイヌ民族博物館と嘉麻市庁舎が特別賞を受賞しました。両建物の設計の背景や意義について、詳しく見ていきましょう。
国立アイヌ民族博物館
国立アイヌ民族博物館は、北海道白老町に位置し、先住民族の文化を尊重する国家プロジェクト「ウポポイ」の中心施設としての役割を担っています。この博物館は、アイヌ文化を復興・発展させる地点であり、地域社会におけるアイヌの歴史と文化を伝える重要な場所です。
設計者のビジョン
設計を手掛けたのは株式会社久米設計。彼らは、博物館が北海道の自然と調和し、アイヌの生活様式を反映するために、自然林の稜線に沿った形状を採用しました。また、パノラミックロビーが設けられ、訪れる人々が自然の美しさを感じながら文化を体験することができるよう配慮されています。
- 名称:国立アイヌ民族博物館
- 所在地:北海道白老郡白老町若草町2-3-1
- 延床面積:8,618㎡
- 階数:地上3階
- 竣工:2019年12月
- 受賞歴:公共建築賞、グッドデザイン賞など
デザインの特徴
「倉」というアイヌの文化に基づいた空間設計を採用し、高床の展示室を二重外郭構造で包むことで、寒冷地域における適切な機能性を確保しています。全体的にアイヌと自然の共存をテーマにしており、訪れる人に深い感動を与える場となっています。
嘉麻市庁舎
次に紹介するのは、福岡県嘉麻市の市庁舎です。この施設は2016年の熊本地震を受けた設計のもと、地域の安全と安心を提供するために進められました。
市民参加の設計
嘉麻市庁舎は、設計段階から市民の意見を取り入れ、市民が愛着を持てるように工夫されています。自然環境に配慮した設計となっており、地域の特性を活かした合理的な公共空間を実現しました。
- 名称:嘉麻市庁舎
- 所在地:福岡県嘉麻市岩崎1180-1
- 延床面積:9,652㎡
- 階数:地上6階
- 竣工:2020年3月
- 受賞歴:多くのデザイン賞を受賞
地域との関わり
建物は遠賀川の近くに立地し、地域の歴史や産業を反映したデザインが施されています。特に、周囲の自然環境との調和が大切にされ、安心・安全な拠点として市民に愛される存在となっています。
まとめ
国立アイヌ民族博物館と嘉麻市庁舎は、それぞれが持つ独自の背景と文化を尊重しながら、地域に密着した公共建築の模範です。これらの受賞によって、さらなる発展が期待されることでしょう。公共建築賞は、今後も質の高い公共空間が生まれることを期待させる重要なイベントであり、地域文化の振興にも寄与しています。