2050年に向けた家族の未来を探る慶應義塾大学の新プロジェクト
慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)は、2050年代に多様化する家族やパートナーシップの形を探求する新たな研究活動を始めました。この新しい組織は「ネクストファミリー研究センター(仮称)」と名付けられ、家族社会学を専門とする阪井裕一郎准教授が研究代表を務めます。このプロジェクトは、2025年に予定されているイベント「『ネクストファミリー』の時代の価値創造を考える──2050年の家族・パートナーシップ像と企業経営のかたち」に向けての前奏とも位置付けられています。
家族の多様なあり方
近年、事実婚やステップファミリー、同性パートナーシップ、選択的シングルといった新たな家族形態が急速に広がっています。従来の「標準家族モデル」では捉えきれないこれらの形に対して、住宅や金融、通信、子育てに関連する各種サービスはどのように対応していくべきか、各産業にとって重要な問いとなっています。また、企業や行政の人事制度や福利厚生においても、従来の婚姻や血縁を基準とする枠組みでは十分に対応しきれない場面が増加しています。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、2020年の50歳時未婚率が男性で約28%、女性で約18%に達し、これが今後も続く見込みです。離婚率の上昇や少子高齢化に伴い、単身や独居者も増えており、新しい形の家族やつながりについて考える必要性が高まっています。
研究と社会実装の融合
本プロジェクトでは、阪井准教授が提唱する「ネクストファミリー」の概念を通じ、20世紀の家族像からの脱却を目指します。2050年の未来における家族のあり方を学際的に探求するとともに、その未来像から逆算し、企業や組織がどのように再構築すればよいかを探るためのソリューションを開発します。また、研究と社会実装を繋げることで、学術研究の成果を実社会に還元することを目指しています。
イベントの内容
2025年12月4日(木)に開催されるイベントでは、多様な家族やパートナーシップの未来像について専門家による講演やパネルディスカッションが行われる予定です。その中で、「ネクストファミリー」の概念や、企業経営がどう変わるべきかについての実践的な視点が提供されることになります。このイベントには、企業の人事やプランニングに携わる方々が参加し、最新のトレンドとそれに対応する戦略を共有する場ともなります。
登壇者のプロフィール
- - 阪井 裕一郎:慶應義塾大学文学部社会学専攻准教授であり、家族社会学の専門家として多くの著書を持つ。
- - 内山 穂南:株式会社wagamama代表取締役で、パートナーシップ証明書発行を通じた社会の実装に取り組む。
- - 篠田 真貴子:経済産業省の委員としても活動し、企業の組織改革を推進するエール株式会社取締役。
- - 白根 由麻:博報堂キャリジョ研プラスリーダーとして働き、企業やクライアントの成長支援に尽力。
これからの社会における家族の形を見据える本プロジェクトは、私たち一人ひとりに新たな「つながり」と「価値」を提示するものとなるでしょう。未来の家族像を共に考え、議論する機会を提供するこの試みに、多くの方々の参加が期待されています。