秩序が崩れ落ちる世界で、人々はどのように生きるか?
2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻は、世界に衝撃を与え、冷戦終結後の秩序を大きく揺るがした。この危機は、人々の移動という新たな地殻変動を引き起こし、国境を越えた「移民・難民」の奔流を生み出した。
本書『移民・難民たちの新世界地図――ウクライナ発「地殻変動」一〇〇〇日の記録』は、ジャーナリスト村山祐介氏が、その混乱と悲劇に満ちた「新世界」を、3万キロに及ぶ取材で描き出す衝撃のルポルタージュである。
本書は、ウクライナ侵攻から1000日間にわたる著者の取材を、ポーランド、イタリア、オランダ、ドイツ、ウクライナ、モルドバ、ジョージア、チュニジアといった国々を舞台に、8章にわたって展開する。
氷点下の森に放たれた「移民兵器」と化したクルド人家族、鉄の船に乗って地中海を渡るアフリカの人々、徴兵を逃れて雪山を越えるウクライナの若者たち…。それぞれの事情を抱え、命がけで国境を越える人々の姿が、克明に描かれる。
著者は、移民・難民たちとの出会いを、彼らの言葉と行動を通して丁寧に描写することで、彼らの置かれた状況だけでなく、彼らの心の内面をも鮮やかに浮かび上がらせる。
彼らの苦悩や希望、そして、絶望を目の当たりにすることで、私たちは、世界で起きている「新たな奔流」の現実と、自分たちが置かれている状況について、深く考えさせられるだろう。
ウクライナ危機が浮き彫りにする、世界のリアル
本書は、移民・難難民問題という複雑な問題を、単なる社会問題としてではなく、世界が直面する新たな課題として捉え、その根底にある人間の尊厳と、国際社会における責任について問いかける。
著者は、本書を通して、私たち一人ひとりが、自分たちの世界観や価値観を問い直し、世界で起きている出来事に対して、より深く関心を持つことの重要性を訴えている。
本書は、単なるルポルタージュを超え、世界の未来を考えるための重要な一冊となっている。