一人でも安全に猫の皮下点滴を実現した「ねこずきのおくるみ」がグッドデザイン賞受賞

猫の医療をサポートする新しい選択肢

最近、飼い猫の生活環境や医療について、私たちは多くの注意を払うようになっています。ペットフード協会が発表したデータによると、1990年の飼い猫の平均寿命は5.1歳でしたが、2023年には15.79歳にまで延びました。これは、室内飼いが基本となり、飼い主が猫に良質な生活を提供できるようになった結果とも言えるでしょう。しかし、その一方で、猫が抱える健康問題も増加しています。特に、腎不全は猫にとって一般的な病気となり、7歳以上の猫の約50%が発症する可能性があります。このため、定期的な皮下点滴が必要なケースが増加しており、飼い主が自宅で点滴を行うことが普通になっています。

一人での点滴の難しさ

しかし、自宅での皮下点滴には大きな課題があります。それは、猫を保定することです。保定とは、猫が動かないように固定する作業のことで、一人暮らしの飼い主にとって、猫をしっかりと押さえつけるための援助者がいないと非常に困難です。そのため、決められた頻度で点滴を行うことが難しい状況が続いていました。このような問題を解決するために開発されたのが「ねこずきのおくるみ」です。

「ねこずきのおくるみ」の特徴

この製品は、従来の「入れる保定袋」ではなく、「着せる保定服」として設計されています。ネコの習性に着目し、前足が床についている通常の体勢で落ち着くことを利用することで、一人でも安全に保定ができるのです。飼い主はシャツのようにおくるみを着せることで、猫を安心させながら点滴を行うことができるようになります。

8月8日の世界ネコの日に販売を開始したところ、すでに47個の注文があり、海外からも関心を寄せられています。香港からのユーザーの声には「おくるみのおかげで一人で皮下点滴ができた」との感謝のメールが寄せられています。これは、ペットと飼い主の負担を軽減する大きな成果といえるでしょう。

グッドデザイン賞の受賞

この「ねこずきのおくるみ」は、2024年度のグッドデザイン賞を受賞しました。審査員からは、「ペットの医療用品において、負担を減らすことは非常に重要である」と評価され、デザインや設計が実体験に基づいていることが高く評価されました。使いやすさや猫への負担軽減が実現されており、素材も洗いやすく、手入れが簡単です。

開発者の思い

この製品を開発したのは、太野由佳子さんです。彼女自身が、慢性腎不全の愛猫ぽんちゃんを看取り、その経験から自宅での介護の重要性を感じました。「もし自宅で介護を受けられていたら、ぽんちゃんはもっと長生きできたかもしれない」という思いから、この製品を6年かけて開発しました。100回以上の試作を重ね、猫の習性を生かした保定服が誕生しました。

商品概要

「ねこずきのおくるみ」は、猫の自宅での皮下点滴をサポートするアイテムです。特許技術でストレスを軽減し、シャツのように包み込むデザインでスムーズな保定を可能にしました。サイズはS・M・Lの3種類が用意されており、岩手県久慈市の熟練職人が手作りしています。価格は20,000円（税込み）で、オンラインショップでも購入できます。

受賞展と祝賀会

この受賞を祝い、2024年11月1日から5日まで東京ミッドタウンで全受賞デザインの展示会が開催されます。また、11月5日には祝賀会も行われます。これを機に、さらに多くの飼い主が「ねこずきのおくるみ」の存在を知り、安全で安心なペットライフを送れるようになることが期待されます。

このように、「ねこずきのおくるみ」は、ネコと飼い主の新しい生活スタイルを提案する画期的なアイテムです。これからも、このような製品が登場し、多くの猫とその飼い主が笑顔で過ごせる未来を願っています。