誰もが住みやすい未来へ
国際NGO、ハビタット・フォー・ヒューマニティと国際環境開発研究所(IIED)は、改善された住環境が経済成長や個人の発展に大きく貢献するという内容の報告書を公開しました。この報告は、5年間にわたる「Home Equals(すべてに公平な住まいを)」というキャンペーンの基盤となっており、全ての人々が適切な住宅へのアクセスを平等に持つことを目指しています。
アジア太平洋地域の現状
アジア太平洋地域は、都市部の貧困に苦しむ人々が最も多く、都市住民の約三分の一がスラムや不適切な住宅環境で生活しています。特に貧困層の人々は、仕事を求めて農村から都市へ移住するため、この問題は年々深刻さを増しています。ハビタット・フォー・ヒューマニティのアジア太平洋地域統括責任者、ルイス・ノダ氏は「適切な住宅の確保が急務だ」と強調しています。
経済効果の実態
報告書によれば、一部の国では住環境の改善によって国内総生産が最大10.5%増加する可能性が示されています。これは、単に住環境が改善されるだけでなく、人々の生活水準も向上し、最終的に国家全体の経済にも好影響をもたらすことを示唆しています。
具体的な成果
以下は、報告書による具体的な調査結果です。
- - 平均寿命の延伸: 一部の国で平均寿命が最大4%延び、2.4年の延長が期待されています。
- - 予防可能な死亡の回避: 年間73万人の人々が予防可能な死を回避できる見込みです。
- - 教育の向上: 一部の国では就学年数が28%も増加する可能性があります。
モデリング手法と国別の成果
この報告書は、低・中所得の102カ国に関する72の指標、130以上の関連論文をもとにした独自のモデリング方法を用いています。これにより、特定の国の予測を導き出し、一部の国においても成果が数値化されました。たとえば、バングラデシュではGDPが2.2~7.25%増加する可能性があり、フィジーでは1~3.3%、ミャンマーでは3.1~10.5%とされています。
G7サミットでの要請
ハビタット・フォー・ヒューマニティは、近日開催されるG7サミットで各国に対し、住宅改善が国際的な発展における重要な要素であることをアピールしています。経済成長、健康、教育などの分野で、住宅問題に取り組むことが必要だと訴えています。
ノダ氏は「適切な住宅の有無が人々の幸福に直結する。この問題に真剣に取り組む必要がある」と力説します。
各国における取り組み
アジア太平洋の各国でも、ハビタットによる積極的な取り組みが進められています。オーストラリアでは政府に対して適切な住宅の提供を求める提言がなされ、ネパールでは地元政府との連携を強化し土地権の確保に取り組む計画です。また、インドネシアでは新しい住宅の建設や改修を進め、市民生活を向上させるための資金調達手段も模索されています。さらに、ベトナムでは帰還者が安心して生活できるための政策的な解決策が検討されています。
結論
住環境の改善は、単に物理的空間の質を向上させるだけでなく、人々の生活の質や国々の経済状況に良い影響を及ぼすことが期待されています。ハビタット・フォー・ヒューマニティは、この重要な課題に取り組むとともに、世界中の貧しい人々に対し、人間らしい生活を実現するサポートを続けています。私たち全員がこの問題に関心を持ち、連携していくことが求められているのです。