津南醸造の代表が東京農工大学でアントレプレナーシップ講義を開催

津南醸造、東京農工大学大学院での講義

新潟県中魚沼郡津南町に本社を持つ津南醸造株式会社は、2025年5月24日に東京農工大学大学院の工学府産業技術専攻で「アントレプレナーシップ」と題した講義を開催しました。この講義では、同社の代表取締役社長である鈴木健吾氏が非常勤講師として登壇し、社会人や学部からの進学者に向けて実社会での経験に基づく貴重な知見を共有しました。

講義の内容

講義の冒頭で鈴木氏は、津南町という豪雪地帯に位置する自社の酒蔵が直面していた課題について説明しました。具体的には、豪雪に覆われる環境を利用した事業の新たな発展の道筋として、低温熟成や微生物制御などの科学的アプローチを採用してきた経緯を示しました。特に、雪中蔵を活用した安定した発酵環境は自然とテクノロジーの融合の好例とも言えます。

次に、鈴木氏はAI技術を取り入れた「スマート醸造」への取り組みを紹介しました。酒の香りや味わいを正確に分析するモデルを用いて品質管理に挑戦する姿勢が、受講生たちの注目を集めました。この手法では、生成AIを利用して経営資源や製造プロセスを再設計する試みも行っているとのことです。

健康と宇宙への挑戦

講義ではさらに、「日本酒とヘルスケアの融合」というテーマも取り上げられました。鈴木氏は、日本酒に使われるαーEGやエルゴチオネイン、アグマチンといった機能性成分に関する研究を進めており、これらが老化抑制や健康促進に役立つ可能性についても述べました。加えて、「月面酒蔵」という構想も披露され、発酵技術の宇宙利用に関するビジョンが学生たちの未来の可能性を広げました。

地域への取り組みと未来の展望

事業発展においては、地元米農家との協力やブランディングの再確認、海外市場への展開が重要であると鈴木氏は強調しました。特に、魚沼産コシヒカリを100%使用した高付加価値商品「郷 GRANDCLASS」やスパークリング日本酒シリーズが国内外で高い評価を得ている例は、地元経済との連携の重要性を示しています。

最後に、鈴木氏は科学技術の専門性と経営感覚を兼ね備えた人材が地域産業や伝統技術の再生、発展に不可欠であると語り、未来のイノベーターたちにメッセージを送りました。実際に、地域資源と科学技術を融合させた挑戦を続け、次世代へと貢献していく姿勢を強調しました。

また、最新のニュースとして、「第令和6酒造年度越後流酒造技術選手権大会」で新潟県知事賞（第1位）を受賞したことに触れ、津南醸造が今後も地域社会とともに成長していく意義について語りました。これからも、津南醸造は革新に向けた挑戦を続けます。