日本のAI導入の現状と今後の課題：調査レポート発表

日本のAI導入の現状と今後の課題

政策コンサルティング会社であるAccess Partnershipは、Workday Inc.の依頼に基づき、AIに関する新しい調査レポート「Bridging the AI Gap: Advancing Adoption and Governance in Japan」を発表しました。このレポートは、日本のAI導入の現状に関する貴重な洞察を提供しており、特に企業のAI導入における課題や期待される市場の可能性に焦点を当てています。

日本におけるAIの位置づけ

日本はAI技術を経済の復興や社会福祉の向上に欠かせない要素として位置づけています。調査によると、2030年には49.9兆円（約3,310億米ドル）の市場機会が見込まれています。しかし、その期待に対して、実際の企業のAI導入状況はあまり進展していないのが現実です。

調査結果の概要

調査では、AIに対する認識が広がっていることが確認されました。93%の企業がAIについてある程度の理解を持っていると答える一方で、本格的な導入を果たしている企業はわずか8%に過ぎません。その大半は、AIソリューションの試験運用や部分導入の段階に留まっています。この結果から、企業はAIの潜在能力を理解しながらも、導入に対して何らかの障壁が存在することがわかります。

導入のギャップ

レポートでは、企業が直面する導入のギャップを説明するため、ARTフレームワークという分析手法が提案されています。以下の3つの側面から構成されています：
1. ユースケース、メリット、リスクに対する認識
2. 技術的および組織的な準備状態
3. AIシステムの透明性と信頼性
このフレームワークによって、企業が直面する問題をより明確に理解することができます。

特に目立つ認識の遅れ

調査によると、大企業では74%がAIのメリットを強く認識しているのに対し、中小企業ではその数値が33%に留まるという結果が出ました。このように、企業規模による認識の差が導入の遅れに影響を及ぼしていることが示唆されています。

企業が求めるサポート

調査からは、企業がAI導入を加速させるために必要な要素も浮かび上がりました。主な要望は以下の3つです：

- ガバナンスのフレームワークを実用化するためのツールや基準
- 専門家によるAIポリシー導入の支援
- 従業員スキルアップを重視した研修

特に、従業員教育に関する需要は高く、50%がスキルアップを求めており、47%が倫理に基づく研修を求めるという結果が出ています。

日本におけるAIの未来

2024年には日本での生成AIの利用率が27%に達する見込みですが、これはアメリカ（69%）や中国（81%）に比べて大きく遅れをとっています。このようなギャップは、企業がAIの可能性を実際のビジネスに変えるために、より良いガバナンスと能力の構築が必要であることを国に警告しています。

Access Partnershipのクライアントサービスディレクター、Abhineet Kaul氏は「日本企業はAIの可能性を認識している。しかし、適切なサポートがあればより多くの企業がAI導入に成功し、経済力の強化につながるだろう」と述べています。また、WorkdayのEunice Lim氏は「持続可能な成長を促進するためには、強力なAIガバナンスが基盤になる」と指摘しています。これは、日本が今後のAI導入を加速するためには不可欠な要素と言えるでしょう。