婦人科がん研究に革新をもたらすアプリ「ハカルテリサーチ」の成果
株式会社DUMSCOが京都大学と共同で開発したアプリ「ハカルテリサーチ」は、婦人科がん患者を対象とした研究において、新たなデータ収集ツールとして活用されました。この成果は、2025年5月23日から25日に開催された「第77回日本産科婦人科学会学術講演会」において京都大学の東山希実教授によって発表され、JSOG Congress Awardを受賞しました。
DUMSCOのHRV測定技術の概要
DUMSCOは、心拍変動(HRV)を測定する技術に特化しており、自律神経の状態を視覚的に理解できる複数のヘルスケアアプリを開発しています。これまでに300万人以上のユーザーから4,000万回を超えるHRVデータを収集しており、HRVとは心拍間隔の変動を示す指標です。このデータを元に、エネルギーレベルを100を基準として数値化し、健康状態を評価する独自のモデルを構築しています。
「ハカルテリサーチ」は、がん患者が日常的に症状を記録し、迅速にHRVを測定できる機能を持っています。このアプリは、医院での治療を受けている患者に必要なデータを提供するだけでなく、患者自身の健康状態を常に把握する手助けとなっています。今般の研究によって、HRVデータは婦人科患者のQOLを評価する新たな指標「HRVウェルネススコア」の開発に寄与しました。
近年の婦人科がん治療におけるQOLの重要性
現代の婦人科がん治療は、外来での長期的な治療にシフトしており、患者の生活の質(QOL)をどう維持するかが重要な課題となっています。しかし、QOL評価には複雑な質問票が必要で、患者自身の自覚症状も見落とされがちです。「ハカルテリサーチ」は、HRVを用いてこの課題を解決することを目指しています。
研究チームは、HRVを定量的に評価する新たな指標、「HRVウェルネススコア」を開発しました。93名の婦人科悪性腫瘍患者から計3,824件のHRVデータを収集し、QOLに関する様々な指標と相関性を分析しています。その結果、HRVスコアが低下することで、患者の疲労感や抑うつ状態といった症状が悪化する傾向があることがわかりました。
HRVウェルネススコアの可能性
一例として、ある患者の病状が悪化した際に、HRVウェルネススコアが急激に低下しました。その後、症状が改善されると共にスコアも回復しました。このことから、HRVデータの継続的な記録がQOLの早期低下を検出する手助けとなる可能性が示唆されています。
適切なQOL評価ができることで、患者の治療に対する主体的な関与が促進され、医療者との円滑なコミュニケーションも可能となります。これにより、がん治療におけるQOLの維持・向上が期待されます。
「ハカルテ」アプリの展望
さらに、DUMSCOは「ハカルテリサーチ」の開発知見を活かして、一般のがん患者が日々の体調を記録できる「ハカルテ」というアプリも提供しています。患者は自分の健康状態を詳細に把握することができ、医療者とのあり方をより良くする手助けをすることが目的です。今後は受診アドバイスや、医療者との簡単なコミュニケーションを支援する機能を追加予定です。このアプリの開発は、がん患者の生活と治療の質を向上させることを目指しています。
DUMSCOは今後も、データとテクノロジーを駆使して様々な課題を解決し、パフォーマンスの向上を図るミッションを遂行していきます。