山梨県が実施した初の火山防災ビジネスコンテスト
山梨県は、全国初の試みである『やまなし火山防災イノベーションピッチコンテスト』を開催しました。このコンテストは、富士山の火山防災において民間企業や研究者が協力し、新しいビジネスを創出することを目的としています。2022年に行われたこのイベントでは、選ばれた5社がその取り組みと成果について発表しました。
報告会は令和7年3月10日に東京都千代田区の新東京ビルで実施され、約70名の関係者が参加。オンラインでも30名が視聴しました。発表内容には、火山噴火時の火口位置推定を可能にする無人観測装置や、登山者の動きを測定するシステムなど、革新的なアイデアが多く見られました。
コンテストの意義と支援内容
山梨県では、富士山火山防災に関する課題を解決するために民間企業との共創を重視しています。選ばれた企業には、県の富士山科学研究所が持つ最新技術と蓄積された知識が支援材料として提供され、最大100万円の活動資金が貸与されることとなります。これにより、火山防災ビジネスが創出され、火山関連の研究者が活動するフィールドも広がるでしょう。
昨年5月には、130名以上が参加した説明会が行われ、20社から多様な応募がありました。書類審査やコンテストを経て、最終的に5社が選ばれました。
成果を報告した企業たち
本コンテストの選ばれた企業のうち、いくつかの特徴的な成果を以下に紹介します。
1.
株式会社クローネは、火山観察用の微気圧観測システムを開発しました。従来の方法では観測データを手に入れるために現地に赴く必要がありましたが、新しいシステムではリモートでデータを取得できる仕組みが整いました。これにより、従来に比べると大幅に効率的なデータ収集が可能になります。
2.
株式会社FLARENETWORKSは、噴火時に人の位置を把握するための人流計測システムを開発しました。災害時には通話ができなくなる中で、スマートフォンの数を計測し人の動きを把握し、リアルタイムで情報を配信することに成功しました。
3.
一般財団法人アジア防災センターは、SNSやGISを利用した火山防災ツールを開発。LINEアプリを活用し、外国人登山者に向けて日英併記で情報を発信できる仕組みを整えました。
4.
能美防災株式会社は、火山災害を仮想体験できるVRコンテンツを制作。子どもや観光客の防災意識を高めることを目指しており、多様な火山現象を視覚的に体験することができます。
5.
株式会社竹中工務店は、火山防災研修ツーリズムを開発。富士山科学研究所での専門家によるセミナーを通じて、企業が専門知識を吸収し、防災に役立てる仕組みを構築しました。実際、50名以上が参加したことで、有料セミナーとしての需要も確認されたとのことです。
トークセッションでの意見交換
成果報告の後には、火山防災産業の活性化や人材育成についてのトークセッションが行われました。国立研究開発法人防災科学技術研究所や他の企業の代表者が登壇し、議論が交わされました。共創の重要性や教育の必要性についても話し合われ、専門的な知識だけでなく、ビジネスの視点も大切だという意見が出ました。
今後の展望
山梨県は今回の報告会を通じて、火山防災の新たな取り組みの可能性を見出しました。今後も民間企業との連携を強化し、火山防災産業の育成並びに地域の安全を向上させるために尽力していく方針です。火山防災は、企業とアカデミアの協力をもとに未来への道を開いていくことでしょう。