国際調査が示す日本のAI成熟度の実情と今後の課題

BSIが発表したAI成熟度調査結果

英国規格協会（BSI）が実施した国際的な調査の結果、日本における人工知能（AI）活用の現状が明らかになりました。この調査は932人のビジネスリーダーを対象に、9つの市場と7つの業界で実施され、AIに対する企業の意識や導入状況を評価しています。調査結果は、日本企業がAIの利点を十分に活用できていないことを示唆しています。

AIへの関心と実際の利用状況

調査によれば、企業がAIに対して高い関心を持っている一方で、実際にAIの利用を促進している企業は全体の76%にとどまっています。特に、AIの導入を最も積極的に進めているのは中国（96%）やインド（94%）であるのに対し、日本は54%と低迷しています。この数字は、世界的なAIの活用に対する認識の違いを示しており、日本がAIを事業に取り入れる意識が他国に比べて遅れていることが浮き彫りになりました。

特に注目すべきは、日本におけるAI導入に対する自信の低さです。AIの利点を最大限に活かすビジネス能力についての自信があると答えたのは50%しかおらず、中国の96%と対照的です。このことは、企業がAIの潜在力を理解しつつも、実際の導入には慎重になっていることを示しています。

BSIのAI成熟度モデル

BSIが開発したAI成熟度モデルは、AI導入における企業の信頼度や準備状況を評価する指標を作成しています。評価は1から5のスコアで示され、日本は1.06と最低の成熟度スコアを記録しました。一方、インドは4.58、そして中国は4.25であり、両国はAI導入において世界のトップを走っています。この結果から、今後の技術革新において日本がさらなる遅れを取らないためには、積極的な取り組みが求められます。

認識のギャップと必要な取り組み

日本のビジネスリーダーの62%が、競争力を維持するためにはAIへの投資が必須であると認識しつつ、52%は現在の投資が十分ではないと答えています。また、75%がAIの安全かつ倫理的に使うためのトレーニングの重要性を感じている一方で、そのようなトレーニングを実施している企業はわずか23%に過ぎません。これは、企業がAIを活用するための信頼性を示す重要な取り組みを行う準備が整っていないことを示しています。

BSI Japanの代表取締役社長、漆原将樹氏は「AIは社会の進歩を促す力を持つが、その導入には信頼感を築くための努力が不可欠」と述べています。さらに、BSIのCEO、スーザン・テイラー・マーチン氏は「AIの安心できる利用のためには、企業が適切なガードレールを設ける役割を果たす必要がある」と強調しています。

日本企業のAIに対する期待と懸念

調査により、53%の日本のビジネスリーダーがAIによる生産性の向上に期待を寄せていますが、38%はサイバーセキュリティを強化するための利用を見込んでいます。しかし、テクノロジーセクターでさえ、4%の企業しかAIに投資していないのに対し、医療セクターでは40%がこの技術への投資を控えています。この数字には、業界によるAIへの期待感の違いが色濃く反映されています。

今後の方向性

BSIは、AIを社会に役立てるためには、次の4つのポイントが重要であると提唱しています。長期的視点での戦略的アプローチ、企業と政策立案者の協調、行動を重視した方針転換、テクノロジーによる社会の進步を鼓舞するリーダーシップの確立です。これらの取り組みが進むことで、日本におけるAIの導入が加速し、他国との競争に遅れを取らない未来が見えてくることが期待されます。

調査の詳細やAI成熟度モデルのさらなる情報は、こちらで確認できます。