伝統と技が息づく老舗和菓子店「鍵善」
京都の祇園町に位置する「鍵善良房」は、江戸時代の享保年間から続く和菓子店として、多くの人々に愛されてきました。今回、新たに発売された書籍『鍵善京の菓子屋の舞台裏』は、この歴史ある店の背景や職人たちの情熱に焦点を当てた一冊です。
和菓子店「鍵善」の魅力
「鍵善」は、3世代にわたって続く割烹方式の菓子作りが特徴の老舗です。地元京都で培われた技巧は、若き職人たちに受け継がれ、今日でも色鮮やかで美しい和菓子が作られています。特に、ふわっとした食感と上質な甘さが際立つ「甘露竹」は、先代の主人が復活させたことで、鍵善の人気商品の一つとなっています。竹に流し込まれた水羊羹は、まさに「祇園町らしい」といえる逸品です。
本書の見どころ
出版された本は、単なる和菓子のカタログやレシピ本ではありません。和菓子作りを支える職人たちや材料生産者の仕事ぶりを、多数の写真と共に紹介することで、読者はその裏側を覗くことができるのです。以下のポイントが本書の魅力です。
1. 材料生産の秘密
和三盆糖や葛など、和菓子の材料を作る現場を取材した内容が盛り込まれています。具体的には、サトウキビの収穫や葛の精製の様子など、現代では珍しい手作りの生産現場が詳らかにされており、そこに通う著者と生産者の対話も交えられています。これにより、和菓子における材料の重要性が再認識されます。
2. 菓子職人の技の公開
「鍵善」は、和菓子作りの伝統を絶やさぬために、職人たちの技能を記録することにも力を入れています。著者である15代目主人・今西善也氏がコメントしている通り、職人たちの手元や作業中の様子が豊富な写真で紹介されています。この記録は、未来の世代に向けての貴重な資料となるでしょう。
3. アートとの交わり
本書では、和菓子作りに関わるアーティストたちの存在にもスポットライトが当たっています。木漆工芸家の黒田辰秋や、画家の鈴木悦郎など、歴代の主人たちとの協力のもとに生まれたデザインや工芸品が数多く紹介されています。これにより、和菓子が持つ文化的価値がより深く理解できます。
まとめ
和菓子に対する情熱を綴った『鍵善京の菓子屋の舞台裏』は、和菓子ファンのみならず、手仕事や日本文化に興味がある方にも必見の内容となっています。職人たちの繊細な技術や、長い歴史に思いを馳せながら、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
書籍情報
『鍵善京の菓子屋の舞台裏』
著者: 今西善也(鍵善良房15代目)
定価: 1,980円(税込)
発行: 小学館
ISBN: 978-4-09-311577-3
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