2040年を見据えたフロンティア育成事業の開始
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、これからの2040年以降の新しい産業の創出に向けて「フロンティア育成事業」を発足させました。この取り組みは、国として必要な新たな研究開発領域—いわゆるフロンティア領域—に焦点を当て、そこから社会実装に結びつけていくことを目的としています。特に、今回は「極限マテリアル」と「地下未利用資源の活用」が主要なテーマとして指摘されています。
フロンティア領域の選定
NEDOイノベーション戦略センター(TSC)の役割は、国内外の技術、市場、政策動向を分析することにあります。そして、これをもとに経済産業省へフロンティア領域の提案を行い、国として集中して支援を行う仕組みを整えています。本事業により、脱炭素社会の実現と新産業の創出を目指しており、フロンティア領域での初期段階の研究開発を支援します。また、NEDOは各研究領域にプログラムディレクター(PD)を設け、進捗管理や事業化の可能性の検討も行っていきます。
目指すテクノロジーと社会実装
フロンティア育成事業が特に注目するのは、将来的に高い成長が期待される領域です。これにより、新たな市場の創出を目指すと同時に、研究成果を社会に実装するための速度を加速させ、国家プロジェクトへの進展やスタートアップ企業の創造を促進します。
研究開発の主要テーマ
今回のプログラムでは、以下の二つの主要テーマが定められています。
1.
極限マテリアル
- この領域では高温超電導とパワーレーザーが研究課題として設定されています。これらは、極限環境下で機能する新しい材料開発を目指し、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に向けて技術革新を加速します。
2.
地下未利用資源の活用
- 特に天然水素に焦点を当て、非化石エネルギーの供給源としての可能性を模索します。これは、石炭や天然ガスといった伝統的な資源からの移行を促進するもので、地球環境に優しいエネルギー供給への道を開くことが期待されます。
PDに選ばれた専門家たち
新たな研究課題の推進を行うためには、優れた専門家の指導が欠かせません。今回、フロンティア領域における研究開発課題の選定を行うために、次の2名がプログラムディレクターとして選ばれました:
1.
藤本 辰雄氏(NEDO TSC参事)
- 京都大学を卒業後、新日本製鉄に入社し、後にケンブリッジ大学でPh.D.を取得。現在は材料研究の最前線で活躍しています。
2.
仁木 栄氏(NEDO TSCフェロー)
- カリフォルニア大学でPh.D.を取得後、様々な研究機関で再生可能エネルギー分野に携わる経験を持ち、現在は持続可能な技術開発の戦略策定に関わっています。
これらの専門家が集い、フロンティア領域の研究開発を加速させる重要な役割を果たします。
採択された研究テーマ
最終的に、合計11件の研究テーマが採択されました。具体的には、以下のようなテーマが含まれています。
1.
高温超電導:
- 産業用電磁石の開発に役立つ高温超電導導体の研究など(3件)
2.
パワーレーザー:
- 高出力化を目指す研究開発(3件)
3.
天然水素:
- 天然水素の生成や回収技術に関する研究(5件)
このように多岐にわたるテーマに基づき、未来の技術革新の礎が築かれていくことになります。これにより、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが進められ、2040年には新たな産業が立ち上がることが期待されています。
まとめ
NEDOのフロンティア育成事業は、2040年以降の新たな産業を見据えた重要な取り組みです。極限マテリアルと地下未利用資源の活用を中心に、研究開発を進めていくことで、私たちの社会が脱炭素を実現しながらも成長を続ける未来が描かれています。今後の成果が楽しみです。