中東情勢の変化と池上彰氏の視点
2024年12月11日、株式会社ポプラ社から池上彰氏の新刊『歴史で読み解く!世界情勢のきほん 中東編』が刊行されます。本書は、複雑で多元的な中東地域の歴史や政治的背景を解説する一冊であり、最近のシリア情勢の変化や、各国の動向を明らかにします。
シリアのアサド政権の崩壊
現在、シリアではアサド政権が崩壊し、アサド大統領とその家族はロシアに亡命しています。この政権は、2011年から続く内戦の中で、イランやロシアからの支援を受けていましたが、その支援が減少した結果、急激に弱体化したのです。
イランはシーア派の立場からアサド政権を支援してきましたが、イスラエルとの戦闘に参加していたヒズボラは、戦局の厳しさも伴って多くの損害を被っています。また、ロシアはウクライナへの軍事侵攻に手一杯の状況です。これらの要因が、アサド政権の崩壊を助長することとなりました。
池上氏は中東の重要な国としてイランを取り上げ、その考え方を本書でこう表現しています。「我々はイラン・イスラム革命を成功させた。アラブ世界への『革命の輸出』も目指しているのだ」と。
サウジアラビアの影響
一方、シリアの反体制勢力はスンニ派が多く、同じくスンニ派であるサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)が彼らを支援しています。池上氏はサウジアラビアの見解を次のように述べています。「我々はイスラム教の聖地であるメッカとメディナを擁している。石油の産出量を決めるOPECの盟主でもある。アメリカでさえ、我が国には頭があがらないのだ。」
サウジアラビアの自信に満ちた発言からは、地域のリーダーとしての立場を確立しようとする意志が伺えます。
池上彰氏の解説の魅力
本書では、イスラエルとパレスチナの対立、イスラエルとヒズボラの戦闘、そしてアサド政権の崩壊といった複雑な中東情勢を、歴史的視点から分かりやすく解説しています。中東を理解するためには、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の背景を知ることが不可欠です。本書ではそれらの知識も紹介されており、読者にとって新しい視点を提供してくれるでしょう。
特に注目されるのは、アメリカの中東政策の変遷です。本書の最後では「アメリカから見た中東」と題し、トランプ再選後のアメリカの政策がどのように変化しているのかを詳しく解説します。現在、中東に駐留している米軍についても触れながら、アメリカの存在感が薄まっている中で、他の国々がどのように動いているのかを考察しています。
中東を知るために
本書は累計8万部の人気シリーズの続編であり、多くの取材エピソードも散りばめられた渾身の内容です。日本と中東の関係についても言及し、池上氏は日本がどのような立場を取るべきか、さらにはその存在価値が問われていると指摘しています。
新しい年の中東情勢の展望を探る本書は、歴史を学びながら現代の問題を理解するために適した一冊であり、是非手に取ってみてはいかがでしょうか。