運送業界の原価上昇に関する実態調査の背景
運送業は、日常生活に欠かせない社会インフラとしての役割があります。しかし、近年この業界は厳しい経営環境に直面しています。全日本トラック協会の分析によると、業界全体の営業損益率は約0%と、非常に低迷しています。さらに、国土交通省の調査では、原価計算を実施している事業者でさえ、その資産を十分に運賃交渉や経営判断に活用できていない実態が明らかになりました。
このような中、アセンド株式会社をはじめとする5社が共同で実施した「運送会社の原価活用・コスト上昇対応に関する実態調査」では、運送業の原価が上昇している現状をリサーチし、その結果を公開しました。この調査により、運送業が直面する課題の実態が浮き彫りになっています。
調査結果の主なポイント
原価は上昇しているが、運賃転嫁は限定的
調査によると、89.9%の供給業者が直近1年間で運送原価が5%以上上昇したと感じており、さらにその中の半数以上(50.5%)は10%以上の上昇を実感しています。しかしながら、運賃にそのコストの上昇を半分以上転嫁できた事業者は、198社中わずか54社(27.3%)のみという結果が示されました。このことから、コストの増加が収益に大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、価格転嫁が進んでいないことが分かります。
原価的な情報の「活用」には障壁が
原価の分析については、60.1%の事業者が情報を全社的に記録・集計している一方で、その分析結果を経営に生かせているのは約4社に1社(27.3%)に過ぎません。これは、原価計算が単なる記録に留まっていることを示唆しており、原価ファクターを活用した経営判断に至っていないという点が問題視されています。
成功する企業は原価を詳細に分析
特に、転嫁成功に関しては、企業の規模よりも原価計算の「粒度」と「活用度」がより重要であることが浮かび上がりました。車両台数別に比較すると、規模の差はわずか10.4ポイントだったのに対し、原価管理についての到達度では21.0ポイントの差が開いています。原価の詳細な分析が成否を分けていることは明瞭です。
ケーススタディ:徹底したコスト管理
具体的に言えば、原価計算をコース別や案件別に行う事業者では、コスト上昇を半分以上運賃に反映できた割合が35.2%に達します。この数字は、全社単位・営業所単位に留まる場合(16.1%)の約2倍です。このことからも、運賃交渉での成功には案件ごとの原価把握が不可欠であると考えられます。
多様な施策を講じる企業の実態
さらに、運賃交渉を最も効果的な取り組みとして実施している企業は91.4%に達し、原価を活用できる企業は平均4個の施策を組み合わせて行っているのに対し、単に記録している企業は平均2.6個と、1.5倍の差が開いています。これは、原価の可視化によって経営の選択肢が多様化し、競争力を高めていることを示しています。
今後の展望
アセンドは、これらの調査結果をもとに、運送業界の持続的な進化をサポートするために、さらなる原価管理のノウハウ提供と施策支援を行う予定です。業界の変革に向けて必要とされる取り組みをしっかりと行い、運送業者の理想の経営実現に寄与していく方向性を確立しています。