内陸大地震の震源近くでの断層破壊メカニズムについて
この度、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の研究者たちが、内陸大地震の震源近くにおいて発生する断層の破壊メカニズムを解明しました。この研究成果は、地震予測における新たな手法の発見につながる可能性があるため、注目を集めています。
研究の背景
日本列島は地震が多発する地域であり、特に内陸部で発生する大地震はその多くが活断層に起因しています。これまでの研究では、断層に沿った活断層の長期評価が行われてきましたが、地震の短期予測を実現するためには、より詳細なメカニズムの理解が必要とされています。今回の研究では、特に内陸大地震の震源が位置する10km付近の地下で発生する強い延性変形が、どのように断層の破壊につながるのかを探求しました。
研究内容
研究チームは、三重県内に位置する中央構造線沿いの断層を対象に調査を行いました。このエリアには、過去に大地震が発生した断層構造が現存しており、実際に地表に露出した岩石をサンプリングしました。ここでの調査結果として、強い延性変形がもたらす微小空洞の形成と、それが地下の断層破壊に至る過程が明らかになりました。具体的には、延性変形の度合いに伴い微小空洞の体積割合が約7.5%を超えると、地下の断層に沿った破壊が発生することが確認されました。
この現象は、金属における微小空洞の発達と類似しており、延性変形が進行することで強度が低下し、最終的に破壊に至る様子が観察されています。これは、断層の破壊メカニズムが地震予測に役立つ可能性を示唆しています。
研究の意義
この研究の成果は、内陸大地震の震源における新たな事例として意義深いものです。特に、延性変形により生じる微小空洞の発達を監視することで、地震の発生をより短期的に予測する技術の実現が期待されます。これにより、大地震による被害を軽減し、安全な暮らしを守るための重要な情報を提供できるでしょう。
今後の展望
今後、研究者たちはこの発見の応用可能性を探るため、延性変形に伴う微小空洞の発達が全体の断層構造に与える影響を検討していく予定です。また、地震による断層破壊の広がりや、これに先立つ挙動を特定するためのさらなる研究が進むことが期待されます。
まとめ
今回の研究によって、内陸大地震の震源近くでの断層の破壊メカニズムが解明され、地震学の分野に新たな知見がもたらされました。この発見が、将来の地震予測技術の発展に寄与することを願っています。
論文情報
研究成果は、『Journal of Geophysical Research: Solid Earth』に掲載されており、詳細なデータや解析結果が議論されています。著者には、産総研の研究者を中心に、東京大学や筑波大学の研究者も名を連ねています。