若手女性研究者の未来を切り開く
2024年度 第19回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者が発表され、2024年9月6日に東京・港区の駐日フランス大使公邸にて授賞式が行われました。この賞は、日本国内で科学研究に取り組む若手女性研究者を支援し、彼女たちの成果を称えることを目的としています。
ロレアルグループの日本法人である日本ロレアル株式会社が主催し、2005年に設立されたこの賞は、物質科学と生命科学の2つの分野で博士後期課程に在籍する40歳未満の女性研究者を対象としています。受賞者には各100万円の奨学金が贈られ、審査では研究の達成度や独自性が重要な評価基準とされています。
受賞者のご紹介
授賞式では、物質科学分野から2名、生命科学分野から2名、合計4名の受賞者が選出されました。以下は、その風貌と研究内容です。
物質科学分野
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所属:大阪大学大学院工学研究科
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研究内容:電磁熱流体力学に基づく熱プラズマ源を用いた材料加工の解明
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受賞理由:溶接技術に科学的観察を取り入れた制御指針の確立が評価されました。
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所属:東京大学大学院理学系研究科
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研究内容:雲から星への電波観測による重い星の誕生過程の解明
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受賞理由:根気よく観測と解析を行い、高度な考察に到達したことが評価されました。
生命科学分野
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所属:九州大学大学院医学系学府
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研究内容:組織特異的な翻訳制御機構の解明
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受賞理由:心機能に異常をもたらすメカニズムの理解を深める画期的なアプローチが評価されました。
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所属:名古屋大学大学院医学研究科
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研究内容:ミクログリアによる神経回路調節機構の解明
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受賞理由:視覚や多様な感覚情報の統合に関する新しい理解が得られた点が評価されました。
シンポジウム:ジェンダー平等へのブレークスルー
受賞式の第二部では、トークセッションが開催され、「科学界におけるジェンダー平等の実現」についての議論が行われました。このセッションには、研究者や有識者が集結し、現状の課題やこれからの方向性について活発に意見を交換しました。
最近の統計では、日本における女性研究者の数が過去最高の18万3300人に達し、全体の研究者に占める割合も18.3%となった一方で、国際的な視点では依然として低水準とのこと。特に、女子学生が理系に進学する際の障壁として、教育者や保護者の偏見が指摘されており、その克服が求められています。東京工業大学副学長の桑田薫氏は、女子学生の選択における保護者の影響力について触れ、今後の教育における質の重要性を訴えました。
このように、「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」は、ただ受賞者を称えるだけでなく、科学界のジェンダー平等の実現に向けた重要な一歩を示しています。支援制度の強化や教育環境の改善によって、さらなる躍進が期待される若手女性研究者たち。その活動と成果が、今後の科学界をどのように発展させていくのか、注目が集まります。