ビジョン
最近、富士通技術が無線通信やレーダーの省電力化に向けた画期的なマイクロ波パワーアンプ技術を開発しました。この技術は、窒化ガリウム(GaN)を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)によるものであり、特に産業や科学、医療分野で需要が高い周波数2.45GHzにおいて、驚異の電力変換効率85.2%を達成しています。
背景
現代の生活に欠かせない無線通信技術や様々な高機能を備えた家電は、ギガヘルツオーダーの電波によって支えられていますが、電波を発生させる過程で多くの電力が消失してしまいます。特にパワーアンプは、その消費電力の高さから電力効率の改善が求められています。ガリウムを基盤としたGaN-HEMTは、高効率でさらに高出力を可能にする特性から通信基地局に広く使用されており、その市場は年々拡大しています。
開発の経緯
GaN-HEMTは、かつてより性能が優れていたものの、結晶成長時の不均一性が課題でした。しかし近年では、同一材料の基板を使用することでGaN結晶の品質向上ができるようになっています。この進化により、2021年には従来の技術を上回る82.8%の電力変換効率を実現しましたが、今回の開発ではさらなる進化が見られます。
新たな技術
今回の発表では、特にチャネルと呼ばれる部分の高品質化と、バッファと呼ばれる部分の高抵抗化が功を奏しました。チャネルの品質を向上させるため、結晶成長条件を見直し、電子トラップの原因となる残留炭素を減少させる工夫を施しました。また、バッファの抵抗を上げるために鉄原子を添加し、200Vの高電圧環境下でも安定したパフォーマンスを発揮させることに成功しました。これらの技術により、2.45GHzのISMバンドで前述の85.2%の電力付加効率を達成しています。
未来への展望
これから富士通社では、開発した技術の実用化に向けた道筋を進めていきます。ミリ波やサブテラヘルツ波など、他の高周波デバイスへの適用も考えられ、より広範な分野での省エネ化に貢献することを目指します。企業の社会的責任として、環境に優しい技術の発展を続けることが必要不可欠です。持続可能な社会の実現に向けた活動は、今後ますます重要になってくるでしょう。
まとめ
富士通が開発した新しいパワーアンプ技術は、今後の無線通信技術の標準を塗り替える可能性を秘めています。省電力化の進展により、私たちの生活もより豊かで持続可能なものになることが期待されます。技術の詳細は2025年3月19日付で「Applied Physics Express」に掲載予定ですので、こちらもぜひご注目ください。