新しい働き方を実現する側島製罐の挑戦
愛知県海部郡大治町に本社を構える缶メーカー、側島製罐株式会社はこのたび、第37回日経ニューオフィス賞において「地域ブロックニューオフィス推進賞」を受賞しました。その背景には、働き方や組織の在り方を根本から見直した経営改革があります。創業118年を誇る老舗企業が、どのようにしてティール組織のモデルを実現するに至ったのか、詳しくご紹介します。
業績低迷からの脱却
数年前の側島製罐は、古典的なトップダウン型の経営スタイルが色濃く残っていました。売上が20年連続で減少したことで社内の雰囲気は暗く、社員のやる気も低下。アンケートでは「モチベーションが上がらない」との声が多く、仕事が苦痛と感じる社員が多数存在しました。この状況を打破すべく新たな方針が打ち出されました。
組織の転換期
2020年4月、六代目の石川貴也代表取締役が入社したことを契機に、側島製罐は大きな方向転換を果たしました。役職や指示命令を廃止し、社員の良心を信じる経営方針にシフトしたのです。経営理念を策定し、社員が自らの給与を決める「自己申告型報酬制度」を導入するなど、社員が自分の仕事に対して意義を見出せるような環境が整えられました。
ティール組織の実現
新オフィスでは、社長室や上司の席はなく、会議室も固定されていません。これにより、社員全員が自分自身で役割や方法を考え、自由に創造的に仕事を進めることが可能となりました。ティール組織とは、ヒエラルキーを排除し、自分の役割と責任を自らが全うするという新しい働き方のことです。
社員の幸福と定義の変革
新オフィスの設計は、社員の働きがいや幸福の最大化を目指すものであり、オフィス空間は全員で進化させていくことが求められます。このような職場環境の変革は、単に生活環境を改善するだけでなく、社会全体に向けたメッセージでもあります。「仕事はつまらない」という閉塞感を打ち破り、社員が自分の人生を歩むことの楽しさを示したいという意志が感じられます。
経営理念の浸透
石川代表取締役は、「宝物を託される人になろう」というビジョンに基づき、社員一人ひとりが人生を豊かにすることができるような仕組みを作ることが重要だと話します。仕事の楽しさや面白さを享受できる環境の実現を目指し、今回のオフィスリニューアルを行いました。側島製罐は、自らも変わることで、世の中に新しい働き方の価値を提示することを目指しています。
結論
側島製罐の取り組みは単なる新オフィスの設計にとどまらず、企業文化や働き方に対する考え方そのものを根底から変えるものです。地域社会や全国においても、このような新しい働き方が広がることを期待せずにはいられません。老舗企業の挑戦が、未来の働き方を変革する一助となるのです。