宇宙と地上の連携でインフラ管理を革新する磐田市の挑戦

静岡県磐田市で革新的なインフラ管理プロジェクトが始まりました。このプロジェクトは株式会社天地人と株式会社アイシンの共同により、日本初となる道路と水道の管理連携を目指すものです。「宇宙水道局」と呼ばれるこの取り組みでは、衛星データを用いて漏水リスクを診断し、さらにアイシンの「みちログ」を活用して地上の路面異常をAIで検知します。これにより、地下の水道管の劣化具合と、地上の路面状態の相関関係を検証し、より高度なインフラ管理が実現するのです。

プロジェクトの背景

日本の上水道網の老朽化が進んでおり、法定耐用年数を超えた管路が約17.6万km、年間2万件以上の漏水事故が発生しています。また、道路でも陥没やポットホールの問題が増加し、生活に重大な影響を与えています。このような背景から、国土交通省が推進している「群マネ」（地域インフラ群再生戦略マネジメント）の理念を実現するため、本プロジェクトが立ち上がったのです。

プロジェクトの概要

このプロジェクトは、2025年9月から2026年2月末までの予定で実施されます。磐田市を実証フィールドとして、様々な企業や地方自治体が連携して取り組みを進めます。具体的には、専用のカメラとAIを搭載した車両が走行データを集め、道路の異常を検知していきます。さらに、集めたデータは「宇宙水道局」に取り込まれ、過去の漏水履歴と照合してリスク評価を行います。

特に今回のプロジェクトでは、磐田市内の道路パトロールカーに加え、遠鉄タクシーの協力を得て、効率的に路面データを収集します。この取り組みは、単なる実証実験に留まらず、全国・世界へと展開可能な次世代インフラ管理モデルの確立を目指しています。

技術の革新

「宇宙水道局」は、衛星データを活用して高精度の漏水リスク評価をおこないます。これにより、漏水の兆候を早期に把握できるため、効率的な維持管理を実現します。一方、「みちログ」では、路面異常をこちらもAIによって迅速に検知し、補修計画の策定を支援します。

このように、宇宙から得られたデータと地上のリアルタイムな情報を統合することによって、漏水起点の陥没や路面沈下の兆候を高精度で把握し、災害リスクを最小限に抑えることが可能になります。

社会的価値

本プロジェクトは、全国の自治体が直面する点検人材不足や予算の制約に対する一つの解決策になると期待されています。地上と地下の情報を統合的に分析することで、事故の予兆を早期に発見し、より効率的な点検活動が可能になるでしょう。また、自治体・民間企業・地域企業が連携した新たな枠組みを形成することで、持続可能なインフラ管理の実現へとつながることが目指されています。