運動中の表情が示す脳の疲れをリアルタイムで評価する新研究

運動中の表情が示す脳の疲れをリアルタイムで評価

新潟医療福祉大学健康スポーツ学科の研究チームが、表情の変化を通じて運動中の脳疲労を評価する新たな方法を発表しました。これは、激しい運動の強度が中から高に上がる際に、特に口元の動きが心理的覚醒度に関連していることを明らかにしたものです。

研究の背景と目的

「運動中の選手の口が開いてきた、疲労が伺えます」といった解説を耳にすることがありますが、これはただの観察ではなく、重要な意味を持つかもしれません。アスリートにとって運動中の集中力や判断力を維持することは、パフォーマンス向上だけでなく怪我の防止にも不可欠です。しかし、運動中には脳にも疲労が蓄積され、それが実行機能に悪影響を及ぼすことが知られています。そこで、本研究では運動強度に応じた脳の疲れを非侵襲的に評価する方法を探求しました。

表情の解析手法の導入

研究チームは、Pythonを用いた表情解析ツール「Py-Feat」を活用し、運動負荷を段階的に増加させる試験中に、参加者の表情を自動的に解析しました。その結果、特に口元の動きが激しい人は、運動強度が高まるにつれて心理的覚醒度が低下することが発見されました。このことは、運動中の表情が脳疲労の指標となる可能性を示唆しています。

具体的な研究結果

この研究では、健康な男子大学生25名を対象にサイクルエルゴメーターを使用した運動テストを行い、その表情をビデオで記録しました。表情の変化は16種類の動き（Action Units: Aus）の数値で表され、AU25（唇の開き）の変化が特に重要であることが明らかになりました。運動強度が上がる際、AU25の変化が心理的覚醒度を低下させることと有意に関連していることが示されました。

表情解析の意義

この研究成果は、運動中の心理的状態のモニタリングにおいて、身体に負担をかけずリアルタイムで評価できる新しい手法としての可能性を示しています。表情を通じて、運動時の脳の疲れを把握することで、アスリートのトレーニングにおける負荷管理や最適な運動プログラムの設計に寄与できるのではないかと考えられます。

研究助成と今後の展望

本研究は、新潟医療福祉大学の研究奨励金とカシオ科学振興財団からの助成を受けており、今後もこの分野の研究が進むことが期待されています。運動時の脳の疲れを管理し、アスリートのパフォーマンスを向上させるための一助となることを願っています。

参考文献

この研究の詳細は、国際的な学術誌「Journal of Sports Sciences」に掲載されています。参考までに、研究のタイトルは「Facial Lower-Region Changes During High-Intensity Exercise as Predictors of Reduced Arousal State」です。