はなしてねの革新と背景
東京大学松尾・岩澤研究室が立ち上げたスタートアップ、株式会社IGSAが新たな脳の健康管理アプリ「はなしてね」を、2025年8月1日から無償で利用者に提供することを発表しました。このサービスは、50歳から70歳の高齢者が対象で、音声を使った簡単な脳の健康チェックを行うことができます。
「はなしてね」の開発は、東京都健康長寿医療センター研究所との共同研究によるもので、利用者がわずか2分間話すだけで、AIが脳の健康状態を解析する仕組みです。このプロジェクトは、認知症および軽度認知障害(MCI)の早期発見・予防の重要性から生まれました。2025年には、約1,030万人の高齢者が認知症やMCIを抱えると推計されています。これにより、要介護や要支援の認定者数が急増しており、介護保険の費用も深刻な問題になっています。
どう使うの?
「はなしてね」の使用はとても簡単です。利用者はLINEを通じて友達登録を行い、Webサイトで思い出や最近の出来事を話すだけで、脳の健康状態を測定することができます。測定結果はLINEで送信され、健康維持に役立つアクションも提案される仕組みです。また、近隣地域の運動や社会参加イベントへの申し込みも可能となっています。
1.
友だち登録: LINEで友だち登録を行います。
2.
測定依頼: Webサイトで話しかけ特定のテーマについて語ります。
3.
結果通知: 測定結果がLINEで通知され、アクションが提案されます。
4.
イベント参加: 地域活動への参加も可能です。
特徴と利点
「はなしてね」の最大の特徴は、話す内容に心理的な負担がほとんどないことです。従来の記憶テストや認知機能のテストではなく、「子どもの頃の思い出」など、自然な発話から脳の健康状態をチェックします。この方式により、利用者は気軽に測定を行うことができ、ストレスなく脳の健康状態を把握できるのです。
加えて、AIによる解析は、従来の手法では捉えきれない細かな変化を測定できるため、高齢者の脳の健康管理に役立ちます。初めの2分間の簡易測定だけでなく、その結果によっては15分間の詳細なセルフ測定に進むことも可能です。これにより、利用者は自分の脳の健康に注意を向け、日常生活を見直すきっかけを得られます。
利用条件と今後の展望
早期公開版は、2025年8月1日から約1ヶ月間無償で提供され、50代以上の方が対象です。利用後はフィードバックを送信してもらう必要があります。正式版のリリース予定は未定ですが、早い段階での開始が期待されています。
今後はサービスをさらなる拡充を目指しており、運動、創作活動、旅行、睡眠関連など、さまざまな分野のサービスと提携する計画が進行中です。また、地域密着型での実施を目指す一環として、東京都墨田区では特にこのサービスを早期に導入し、地域の健康増進活動に繋げる方針です。
まとめ
「はなしてね」は、認知症やMCIの早期発見を実現する新たな一歩となることが期待されます。生活の中で無理なく実施でき、将来的にはこのサービスが全国の高齢者に広がることで、脳の健康を守る社会が実現できることを願っています。そして、私たちの脳の健康を簡単に管理できる時代が、すぐそこまで来ています。