新たな運動評価法の開発
慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの研究チームが、心血管疾患を抱える患者の心肺機能を評価するための革新的な方法を開発しました。今般の研究では、皮膚に貼るだけで汗中の乳酸値を測定できるバイオセンサを用いて、心疾患患者の運動評価が実現しました。
研究の背景と目的
心疾患患者にとって運動療法はリハビリテーションの重要な部分ですが、これまでの評価方法は複雑かつ高価な機械を必要としていました。そこで勝俣良紀専任講師と佐藤和毅教授を中心とする研究グループが、株式会社グレースイメージングと共同で新たなアプローチに取り組むことになったのです。
研究の手法
本研究では、心肺運動負荷試験中に汗乳酸センサを使い、患者の汗中の乳酸値を連続的にモニタリングするという手法を採用しました。この方法を介して、嫌気性代謝閾値(AT)を推定することが可能になります。研究は医師主導の治験として進められ、治験計画書番号LacS-001に基づきました。
有効性と安全性の確認
実施された治験において、汗乳酸値から得られた乳酸性代謝閾値(sLT)を基にATを推定できることが示され、主要評価項目を満たす形で有効性が確認されました。興味深いことに、センサを貼付した際には有害事象が報告されず、その安全性も明らかとなりました。これによって、心疾患患者にとって新たな運動療法を行う際の選択肢が広がりました。
従来の方法との比較
従来の心肺機能評価は呼気ガス分析によることが多く、技術的にも高価な機器を要求します。一方、今回の開発したバイオセンサは、手軽に使用できるため、患者にとってのストレスが軽減され、医療従事者にとっても効率が向上する可能性があります。
今後の展望
共同研究グループは、引き続きこの機器を医療機器として製造・販売するための承認を目指し、さらなる開発を進めていきます。今回の技術革新により、より多くの心疾患患者が効果的な運動療法を受けられることが期待されます。
この研究成果は、2024年8月16日に『Scientific Reports』誌にて発表され、世界中で注目されています。詳細については、慶應義塾大学のプレスリリースも参照してください。
まとめ
心疾患患者の治療は長い道のりですが、今回の研究によって新しい道が開かれました。これからのリハビリテーションの在り方に大きな影響を与えることは間違いないでしょう。