ライオン株式会社の転移学習モデル
ライオン株式会社は、近年の研究開発において独自の転移学習モデルを導入し、製品開発の効率化と精度向上を実現しました。これは、同社がこれまでに蓄積してきたデータを横断的に活用することにより、限られたデータでも高精度な予測を可能にする技術です。
研究背景
ライオンは、2023年にスタートした中期経営計画「Vision 2030 2nd STAGE」において、『ものづくりDX』を重要なテーマと位置付け、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に取り組んでいます。特に、消費者の多様なニーズに応えるため、高品質な製品を迅速に市場に投入する体制を整えることが求められています。
近年では、生活者が製品に求める品質が多様化しており、研究開発における新たな価値創造が急務となっています。これまでも機械学習を利用して研究開発の生産性を向上させてきたライオンですが、新製品の開発初期においては、必要なデータが揃わないことから課題が発生していました。
転移学習モデルの導入
そこでライオンは、ボディソープの研究データを浴室用洗剤の開発に応用する新たなAI技術として、転移学習モデルを構築しました。この技術は、ボディソープと浴室用洗剤という異なる製品間でのデータの転用を可能にし、研究開発における生産性の向上を図ります。
実際の開発プロセスでは、洗浄力や除菌力といった複数の要求される品質を同時に満たすために、新規成分の探索と試行錯誤が不可欠です。それにもかかわらず、従来は試験に多くの時間を費やす必要がありましたが、この転移学習モデルにより、少量のデータからでも高精度な品質預測が可能となりました。
研究結果とその活用
転移学習モデルを使用した結果、浴室用洗剤の品質予測精度は従来のモデルと比較して飛躍的に向上しました。実績としては、実測データとの照合でも高い予測精度を達成し、必要な実験数を最大で85%削減できると見込まれ、開発期間の大幅な短縮が可能になることが期待されています。今後はこの手法をさらに他の製品の開発へも応用し、研究開発効率の向上を目指します。
発表と受賞
この研究結果は、2025年11月26日から27日に広島県で開催予定の「第48回ケモインフォマティクス討論会」にて発表され、「優秀ポスター賞」を受賞することが決定しています。これはライオンにとって、昨年に続く2年連続の受賞となり、転移学習モデルの信頼性を示す証拠とも言えます。
まとめ
ライオン株式会社は、この転移学習モデルを活用し、さらなる研究開発のスピードアップを図っていきます。消費者ニーズを深掘り、新しい製品や技術開発への時間を充てることで、今後もより価値のある製品を世に伝えていく姿勢を保つでしょう。デジタル技術を駆使して、さらなる企業価値の向上に寄与することを目指すライオンから目が離せません。