2025年12月10日、ソニックガーデンは新たに出版事業を展開し、ミシマ社との提携を発表しました。この提携は、両社の理念や思想の共鳴に基づくもので、特に「仕事を技芸とする」新しい価値観を広めることを目的としています。ソニックガーデンは、ソフトウェアを通じた事業開発や業務改善を主業務とするIT企業であり、今回の「倉貫書房」の設立は、その活動を一歩進め、文化を豊かにするための新たな挑戦となります。
ソニックガーデンの創業者、倉貫義人氏は、従来の「仕事」という概念が、多くの人々にとって苦役として扱われている現状に懸念を示しています。彼は「仕事を技芸として捉える」ことが、個々の成長と創造的な喜びをもたらすと信じています。この新しい思想は、技術と芸術の架け橋となり、自らの職務に対する新たな意義を見出す手助けをするでしょう。
一方、ミシマ社は「一冊入魂」という理念のもと、一つ一つの本を丁寧に制作し、読者との直接的な関係を大切にしてきました。彼らのアプローチは、効率や量産といった従来の業務スタイルから脱却し、本一冊の持つ価値を探求しています。今回の提携により、両社は相互の強みを活かし、出版業界に新たな風を吹き込むことを目指しています。
提携の柱となる「返本なし・書店への掛け率50%」という新流通モデルは、書店との対等な関係を築き、出版業界のビジネスモデル変革を試みています。倉貫書房は、ミシマ社の編集や営業の知見を生かし、今後「仕事技芸論」を広める書籍を刊行していく予定です。初となる作品は、2026年2月5日に発刊が予定されている『新米マネージャー、最悪な未来を変える』であり、この書籍が新たな動きの一環としてどのように受け入れられるかが注目されます。
舌戦を繰り広げる企業間の競争が激化する中、ソニックガーデンとミシマ社の提携は、単なる業務委託ではなく、双方の理念を深く共有し合った結果です。このコラボレーションは、出版における技術と芸術の融合、そして仕事を楽しむ文化の再構築につながると期待されています。倉貫氏は「仕事が面白くなることで、社会全体が明るくなる」と語り、この思いを実現するために新たな一歩を踏み出します。
最後に、両社の代表から寄せられたコメントも印象的です。倉貫氏は、「ライフワークとしてこの思想を広めることにミシマ社とともに挑むことができる喜び」を表現し、三島邦弘氏も「ミシマ社が実践してきたことが倉貫氏の思想と合致することに驚きを感じている」と述べています。このように、両社の共有するビジョンは、今後の出版業界において大きな意味を持つことでしょう。文化の発展に寄与する一環として、これらの取り組みがどのように実を結ぶのかが楽しみです。