世界初の商用アンモニア燃料タグボート「魁」が竣工
2023年8月23日、IHIグループの株式会社IHI原動機と日本郵船株式会社が共同開発したアンモニア燃料タグボート「魁」が無事竣工しました。この船は、商用利用を前提とした世界初のアンモニア燃料船であり、今後は東京湾での曳船業務に従事しつつ、約3ヵ月にわたる実証航海を行う予定です。
「魁」は、2021年10月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業の一環として開発が始まりました。IHI原動機はこのプロジェクトにおいて、船の主機関となるアンモニア燃料エンジンの設計と製造を担当しました。船自体は、2015年にLNG燃料タグボートとして最初に竣工した船の改造版であり、約8年間東京湾で活躍していました。
改造工事は2023年10月に京浜ドック株式会社の追浜工場で行われ、主機関や燃料供給システムがアンモニア燃料用に変更されました。これにより、海上での航行試験が可能となり、本日、無事に竣工を迎えることができました。
今後の予定として、IHI原動機ではアンモニア燃料エンジンのさらなる開発を進めており、将来的にはアンモニア輸送船への搭載を検討しています。この計画はNEDOのGI基金による支援を受けており、2026年11月の竣工を目指しています。
本プロジェクトは日本の海運業界における重要な一歩であり、環境に配慮した新しい燃料の活用が期待されます。特に、温暖化対策としての観点からもアンモニアの燃料利用は注目されており、この船がその先駆けとなることで、海運業全体にポジティブな影響を与えることが期待されています。日本郵船グループの株式会社新日本海洋社が担当する東京湾での活動は、この新しい燃料の安全性と効率性を実証する貴重な機会でもあります。
「魁」は、環境保護の新しい風を吹き込む存在として、今後の航海がどのような成果を挙げるか、多くの関係者が注目しています。新たな燃料技術の商用化が進む中、この船による実証航海は、持続可能な運輸システムの構築に向けた重要な一歩となることでしょう。