有機EL素子の新しい検査技術が誕生
株式会社東陽テクニカは、アメリカの子会社TOYOTech LLCと共に進めていたプロジェクトから、画期的な検査技術を開発しました。この技術は、シャープディスプレイテクノロジー株式会社や北陸先端科学技術大学院大学との共同研究の成果であり、有機EL素子の超低輝度における挙動を詳細に調べることができます。
開発背景
有機EL素子は、特にスマートフォンやテレビなどにおいて、その薄型軽量性や低消費電力から広く利用されています。これらの素子は非常に薄い膜から構成されており、その性能を最大化するためには、製造過程における特性評価が重要です。特性評価の一つとして、J-V-L特性(電流密度-電圧-輝度)という方法がありますが、これまでの技術では、発光開始時の微小な電流や低輝度の測定が困難でした。
今回株式会社東陽テクニカが開発した検査技術では、有機EL素子に流れる微小電流と発 光強度を高感度で同時に測定できるようになりました。具体的には、電圧が変化する際に急激に流れる電流の変化と、その際の発光強度の差を解析することで、素子の劣化の進行状況や表示ムラをチェックできるようになります。この技術の導入により、有機EL素子の寿命を延ばし、性能向上に寄与することが期待されています。
技術の特徴
新技術では、高感度のシリコンフォトダイオードを使用し、特殊な計測方法を取ります。これにより、超低輝度領域だけではなく、高輝度での測定も行なうことができ、幅広い性能解析が可能となります。特に、劣化による表示ムラを分析することができるようになった点が大きな利点です。
この技術は、8月に韓国で行われた国際ディスプレイ会議で、共同発表の形で紹介されました。また、2024年10月1日からは「DCM1000型DC-JVL測定システム」として、アメリカやアジア圏、ヨーロッパへ向けてTOYOTechが販売を開始します。
企業の紹介
TOYOTech LLCは、2015年に設立され、東陽テクニカの計測技術を基にした製品を提供する現地法人です。特に、情報通信、自動車、新材料、EMC分野などの評価試験を中心に活動しています。また、シリコンバレーで最先端の技術や情報を収集し、スタートアップ企業との連携を図る役割も果たしています。
一方、株式会社東陽テクニカは1953年に設立されて以来、計測技術のリーディングカンパニーとして様々な分野での技術革新に貢献してきました。5G通信や自動運転車の技術開発、クリーンエネルギーへの取り組みなど、現在も最前線で活躍しています。
最後に
この新しい検査技術の開発は、有機EL素子の性能向上に寄与するだけでなく、今後のディスプレイ技術の進化においても重要な意味を持つでしょう。ディスプレイ業界にとって、劣化や表示ムラの解析は今後ますます重要なテーマとなっていくはずです。今後の動向にもぜひ注目していきたいところです。