2024年8月27日、パリにあるユネスコ本部で、「国際障害者インクルージョン会議」が開催されました。この会議は、国際パラリンピック委員会(IPC)とユネスコが共催し、パラスポーツを通じた社会変革の促進を目的として実施されました。この場に登壇したのが、IPCの理事を務めるマセソン美季さんです。彼女は、IPC公認教材である『I’mPOSSIBLE』の日本語版開発メンバーとして、教育現場への展開を紹介しました。
この会議は、「パリ2024パラリンピック競技大会」の開催に合わせて企画されたもので、政府関係者や民間企業、スポーツ団体、またアドボケートなどが集まり、インクルーシブな社会を目指す取り組みが議論されました。セッションでは、障害者がスポーツ活動に参加することを促進するためのインフラ整備や文化的多様性の尊重、教育の質向上といったテーマが話し合われました。
特に、「インクルーシブで質の高い体育と遊び」をテーマにしたパネルディスカッションでは、多様なバックグラウンドを持つ4名の専門家が参加し、教育や生涯学習へのアクセスの重要性について熱く意見を交わしました。この中で、マセソンさんは東京2020パラリンピック競技大会のレガシーを活用し、2017年から日本の学校で実施されている『I’mPOSSIBLE』の事例を紹介しました。
彼女は、パラスポーツがインクルージョンを推進する役割を果たしていることを強調し、現在の教育現場での実践における留意点を説明しました。インクルーシブな教育活動には、障害のある子どもたちのウェルビーイングが向上すること、また障害に対する偏見をなくすことの2つの重要な側面があると述べました。
また、マセソンさんは、日本の教材発表が文部科学省やスポーツ庁からの通知文と連携し、多くのステークホルダーとの協働によって大きなインパクトをもたらしたことも評価されました。参加者たちからも、この日本の取り組みが他国でのモデルケースになることが期待されるとの声がありました。
マセソンさんは自身の活動を通じて、「教室から社会を変えることができる」という信念を持ち、インクルーシブなマインドを教育現場に広めることに情熱を注いでいます。地道な活動のため成果の計測が難しいものの、多くの関係者が興味を持って参加していることを実感しています。彼女は、パネルディスカッションでの議論が「Fit for Life」の提言にも貢献することに期待を寄せています。
マセソン美季さんの経歴には、1998年の長野パラリンピックにおける金メダリストとしての輝かしい実績があります。選手生活からの引退後は、「こどもが変われば社会が変わる」という理念に基づき、教育とスポーツを通じてインクルーシブな社会の構築を目指して活動を行っています。現在は、IPC教育委員の他に、DEI(多様性、公平性、包摂性)コンサルタントとしても企業支援に関与しています。
この「国際障害者インクルージョン会議」は、障害者インクルージョンを促進するための政策見直しや投資増加を目的とした重要な機会となりました。世界の障害者の人口は15%以上に及び、その包摂を目指すパラスポーツの重要性が改めて認識され、全体の調和と共生に向けた取り組みが今後も続くことが期待されます。