2025年5月15日に、日本初となる「World」プロジェクトの事業説明会が開催されました。企画したのは、グローバル技術企業であるTools for Humanity(TFH)です。本イベントでは、TFHの日本代表である牧野友衛氏が主導し、AI専門家の茶圓将裕氏を招いたパネルディスカッションが行われ、参加者は「World ID」の重要性について学びました。
Worldプロジェクトの目的
「World」プロジェクトの核となるのは、AIと人間をオンラインで明確に区別できる仕組みを構築することです。牧野氏はプレゼンテーションで、AIの進化が従来の産業革命を上回るスピードで進行していると指摘。「人間性を証明する仕組みがなければなりすましや詐欺が横行し、社会の信頼が損なわれる恐れがある」と警告しました。
牧野氏は「World ID」がプライバシーや匿名性を保ちながら、AIと人間を区別できる技術であると強調。また、このIDはセキュリティの観点からも安全な設計になっていると述べ、リスク軽減を図る意義を説明しました。
パネルディスカッションの内容
パネルディスカッションでは、牧野氏と茶圓氏がAIと人間の相互関係について語り合いました。茶圓氏は生成AIによる「なりすまし」リスクに言及し、「今やAIは本物と見分けがつかないほどのレベルに達しているため、従来のIDシステムでは防ぎきれない」と危機感を表明しました。
また、プライバシー保護と革新技術とのせめぎ合いも話題に。牧野氏は「個人情報を出さないことが大切であり、Worldは最小限の情報収集に基づいて設計されている」とし、個人情報の保護を最優先に掲げました。
茶圓氏はAIとの共存の必要性について触れ、今後はAIを敵視するのではなく、補完的な存在として活用することが重要だと強調。二人の共通認識として、AIを信頼できるシステムの中で有意義に利用することで、より良い社会を実現することが目指されています。
GUGAへの参加
イベントにはGUGA(生成AI活用普及協会)から小村氏も参加し、AIと人間を区別することが新しい常識であると述べ、「Tools for HumanityがGUGAに加わっていただき、共に安心・安全なAI社会を構築していきたい」と語りました。今後TFHはGUGAと連携し、向上したAI活用の普及を進める方針を示しています。
日本における事業展開
Tools for Humanityは、今後「World」プロジェクトの拡大に向けた取り組みを進めます。
1.
戦略的パートナーシップの強化
- 博報堂との提携を通じて、「World ID」の認知拡大を図ります。
- 国内の11店舗を「Orb」認証拠点とする連携を発表しました。
- アパレル企業「バロックジャパンリミテッド」との共同プロジェクトを開始し、若年層への認知向上を図ります。
2.
利用ケースの創出
- Web3ゲームプロジェクトとの連携を予定しており、ユーザー認証の強化を図っています。
- マッチングアプリ「Tinder」との提携を通じて、信頼性向上にも貢献する予定です。
3.
普及活動の拡大
- イベントやワークショップを開催し、一般消費者や企業への「人間性の証明」の理解を促進します。
Worldプロジェクトの意義
WorldはAI時代の人間性の証明を提供するプロトコルです。その核心となるWorld IDは、ユーザーが自己を証明する手段を提供し、個人情報を開示せずに「自分が人間である」と確認できる仕組みです。
まとめ
Tools for Humanityは、より公平なデジタル経済への移行を目指し、2023年に設立されました。AIがもたらす新たな課題に対して、技術と倫理を両立させたシステムを構築することで、社会全体の信頼を回復し、持続可能な未来へと進んでいく所存です。