メタボとロコモの関連性を探る新たな研究
近年、メタボリックシンドローム(以下、メタボ)とロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)の関連性についての研究が注目されており、特に50代からの肥満や運動機能の低下が大きな健康リスクを持つことが言われています。この度、千葉大学大学院医学研究院の中川良特任准教授らの研究チームが、3万人以上の健診データを分析し、メタボとロコモの関連性を解明しました。
研究の背景
ロコモは加齢に伴う運動機能の低下を意味し、将来的には要介護状態やフレイルのリスクを高める要因となります。特に労働者にとって、ロコモは腰痛や転倒事故との関連が深く、日常生活に多大な影響を及ぼします。一方で、メタボは心血管疾患や糖尿病のリスクが高く、早期発見が求められています。このような背景から、両者の関連性を解明することが重要となります。
研究の成果
本研究は、2021年度に健診を受けた35,059人を対象にしたもので、平均年齢は50歳でした。これらのデータをもとに、ロコモの有病率は約15%、メタボは7.5%という結果が得られました。注目すべきは、メタボ群におけるロコモ患者の割合が24%にも達していることで、非メタボ群に比べて有意に高いことが確認されました。特に50代では、メタボのある男性の32%、女性の53%がロコモも併発しており、この率は非メタボ群の2倍以上にのぼります。
メタボとロコモの合併がもたらす問題
研究では、50代の被験者においてロコモとメタボが同時に存在することによって、腹囲や血糖値の上昇が見られ、高血圧、糖尿病、高脂血症の治療を受けている人の割合も高いことが示されました。これにより、メタボとロコモの合併が、今後の健康問題、生じる可能性が高いことが指摘されています。一般的に、ロコモは高齢者特有の問題と認識されていますが、今回の研究により中高年期でもそのリスクが顕著になることが明らかとなりました。論文によると、このリスクを中年期に早期に把握し介入するためには、メタボとロコモの同時健診が必要であるとされています。
今後の展望
今回の研究では、健診データ最大の用途が示され、ロコモ評価をメタボと併せて行う重要性が初めて実証されました。この成果をもとに、包括的な健康評価システムの構築や、生活習慣に対する指導の標準化へとつなげていく計画が進められています。
用語解説
- - リアルワールドデータ: 日常的に収集される医療データ、実際の診療を反映した情報。
- - メタボリックシンドローム: 内臓脂肪型肥満と高血圧・高血糖・脂質異常のいずれかが関与する状態。
- - フレイル: 身体的・精神的・社会的機能が低下した状態。
本研究は千葉大学をはじめとする数機関の研究者が協力して実施され、一般社団法人日本人間ドック学会の支援を受けて進められました。今後も中年から高齢期にかけての健康リスクを減少させる努力が続けられることが期待されます。