データ駆動型レーザー加工でガラスの未来を切り開く
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と東京農工大学が共同で開発した新技術が、ガラス表面へのナノ加工に革命をもたらします。この技術により、欠損の少ないナノ周期構造が高効率で形成され、今後の光学機器や高機能ディスプレイへの応用が期待されています。
01. 進化したナノ加工技術の背景
ガラスは透明で硬い特性を持つ材料ですが、そこにナノサイズの周期構造を作ることで、光の特性を驚くほど自在に操ることが可能になります。具体的には、光の反射や透過率を変える光学的効果が得られます。この技術の開発が進む背景には、近年のフェムト秒レーザー技術の進化があり、これまでの加工法と比べ、より高精度なナノ加工が実現可能となりました。
しかし、ガラス表面へのナノ加工には、表面状態やレーザーの照射条件に強く依存するという課題がありました。特に、脆性破壊によりクラックが入ることが多く、高品質なナノ構造の安定した形成が難しい状況でした。
02. データ駆動型レーザー加工システムの開発
今回の研究では、ガラス表面へのナノ加工をリアルタイムでモニタリングし、そのデータを基にフェムト秒レーザーパルスの強度をフィードバック制御するデータ駆動型レーザー加工システムが開発されました。このシステムを通じて、ガラス表面のナノ加工における欠損率は驚異的に30分の1にまで低減されました。データ駆動型のアプローチによって、レーザー加工の安定性が飛躍的に向上したのです。
この成果によって、必要な部分に特定の光学特性を付与した部品の製造が可能になり、例えば低反射や高透過の特性を持つ光学部品を簡単に作成できるようになります。これにより、高機能なディスプレイや、特殊な機能を持つ窓ガラスの需要増加が見込まれます。
03. 実験結果とその意義
研究では、合成石英ガラスを使用し、特定の光の波長をもちいることで加工後の表面に形成されるナノ周期構造の確認が行われました。実験の結果、相対的な反射率と透過率が測定され、特に200nmの周期が均一な構造として形成されることが確認されました。
さらに、このナノ構造化する過程で得たプロセスデータから、反射率と透過率の関係性が数値的に明らかとなり、今後の研究や製品開発において重要な知見となることが期待されています。
04. 今後の展望
さらに、このデータ駆動型レーザー加工システムは、他の多様な透明材料にも適応可能であることが示唆されています。将来的にはメートルサイズでの大面積加工が可能となれば、様々な産業での応用が進むでしょう。メタマテリアルや構造色の表面加工、光源の特性改善など多岐にわたる可能性が広がっています。
今後はこの技術を製造ラインに実際に組み込むための研究が進む予定であり、これが実現すれば、光学機器の製造プロセスが大きく変わることが期待されます。研究者たちの新たな発見と成果に注目です。
論文情報
- - 論文タイトル:Stable fabrication of femtosecond-laser-induced periodic nanostructures on glass by using real-time monitoring and active feedback control
- - 掲載誌:Light: Advanced Manufacturing
- - 著者:Godai Miyaji, Daisuke Nagai, Takemichi Miyoshi, Hideyuki Takada, Dai Yoshitomi, and Aiko Narazaki
- - DOI:10.37188/lam.2025.003