リンナイとエナリスのコラボレーション
リンナイ株式会社(名古屋市)と株式会社エナリス(東京)が新たな実証実験を行うことが明らかになりました。この実証は、ハイブリッド給湯・暖房システム「ECO ONE」の中で、電力需要と供給の調整を目指したものです。2025年2月から始まるこの実証実験では、卸電力取引市場や需給調整市場でのハイブリッド給湯器の活用可能性を検証します。
実証実験の背景
近年、再生可能エネルギーが重要視されており、特にその不安定な出力を補完するための手段として「デマンドレスポンス(DR)」が注目されています。家庭用蓄電池や電気自動車、ヒートポンプ給湯器など、低圧リソースが今後ますます普及する傾向にあります。これらの機器をインターネットを介して遠隔操作し、DRに対応する「DRready」技術へのニーズも高まっています。
実証実験の目的
リンナイは、2050年までにカーボンニュートラルを実現するため、2030年までにハイブリッド給湯器を年間30万台販売する計画を持っています。この目標に向けて、地球環境問題への対応および生活の質の向上に貢献することを目指しています。
エナリスは、2016年から経済産業省のVPP(バーチャルパワープラント)実証に参加し、高圧および低圧リソース活用の研究を進めてきました。今回の実証では、これまで培った制御技術を活用し、ハイブリッド給湯器の潜在能力を最大限に引き出すことを目指しています。
ハイブリッド給湯器ECO ONEの特長
ECO ONEは、電気ヒートポンプとガス給湯器を掛け合わせた省エネ性能に優れたシステムです。この装置は、通常はヒートポンプユニットを使って空気中の熱を利用しお湯を貯蔵します。タンク内のお湯が不足すると、ガス補助熱源機に切り替わり、必要な時に即座に温水を供給できるため、湯切れの心配もありません。
この特性により、電力の余剰がある時間帯にはお湯を積極的に温め、消費を増やす「上げDR」と、需給が逼迫している時間帯には加熱を止める「下げDR」という両方のDRが可能となります。これによって多くの供出量が確保できると期待されています。しかし、省エネ機器であるため、1台あたりの電力消費量が限られていることが全体の制御精度を維持する課題とされています。
MEC技術の活用
エナリスはMEC(Multi-access Edge Computing)技術を用い、他の機器と組み合わせた群管理を展開します。これにより多様なリソースを効率的に制御し、DRready機器としての機能を最大限に活用する計画です。今回の実証によって、これらの技術がどのように社会インフラとして役立つかを検証していく予定です。
実証の詳細
実証期間は2025年2月から2026年1月まで予定されており、最大100台のECO ONEが本州エリアに設置され、家庭用蓄電池も模擬の形で約100台が含まれます。エナリスの分散型エネルギーリソースマネジメントシステムとの連携が予定されており、群制御による需給調整を実施します。これは、ハイブリッド給湯器と家庭用蓄電池を組み合わせた複合的な制御を行うことで、さらなる効率性を何処まで高められるかを探る試みでもあります。
リンナイとエナリスは、ハイブリッド給湯器の実証を通じて、再生可能エネルギーの主要電源化、脱炭素社会の構築に貢献する道を開拓していく考えです。