運動が脳を守る新たなメカニズムを解明
順天堂大学医学部の研究チームが、運動が持つ脳保護作用の背後にある新たなメカニズムを発見しました。この研究は、運動によって骨格筋で増加したミトコンドリアが、血小板を介して脳に運ばれるという新しい生体防御機構を明らかにしたものです。
研究の背景
脳卒中に対する急性期治療は重要ですが、発症後に治療を受けられなかった患者は多く、慢性的な後遺症に悩まされることが一般的です。現在、日本を含む多くの国で高齢化が進行しており、サルコペニア(加齢に伴う筋力の低下)やフレイル(虚弱)などが脳卒中後の回復を妨げています。このような状況において、運動が脳卒中の予防や回復に効果的であることが以前から認識されていますが、その具体的なメカニズムは十分に解明されていなかったのです。
研究内容
研究チームでは、マウスを用いた脳梗塞モデルおよび慢性脳低灌流モデルを利用し、運動が脳虚血に与える影響を調査しました。調査の結果、運動を行ったマウスでは白質障害の進行が抑制され、記憶や運動機能の改善が確認されました。
特に注目すべきは、運動によって増加した骨格筋由来のミトコンドリアが血液中に放出され、血小板によって脳へ運ばれるという点です。このことは、血小板が脳虚血部位に集積する特性を持つため、運動を通じて筋肉から脳にミトコンドリアが移行し、脳を保護する働きがあることを示唆しています。
ミトコンドリアの役割
さらに研究を進めた結果、血皮膚内に存在するミトコンドリアが、虚血環境下でも神経細胞の生存を促進し、炎症を抑制することが実験により確認されました。これにより、脳内の細胞間の恒常性維持や炎症制御にミトコンドリアが寄与していることが明らかになったのです。
今後の展望
この新しい知見は、脳卒中後遺症の軽減や血管性認知症の予防、高齢者のサルコペニア対策としての新たな治療戦略へとつながる可能性があります。特に運動が困難な患者に対しては、血小板由来のミトコンドリアを用いた新たな治療法の開発が期待されています。
これからは、人における検証が進められれば、脳卒中治療および予防の新たな選択肢として、より多くの患者に恩恵をもたらすことが期待されています。
この研究成果は、2026年1月15日に『MedComm』のオンライン版にて発表されました。今後も医療現場への応用が望まれています。