ニチバンと東北大学が新たな医療技術を開発
最近、ニチバン株式会社、東北大学、有限会社バイオ研の3者が、医療機関での創傷治療の効率を高めるための新しいプロジェクトを始めました。この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて進められています。プロジェクトの目的は、難治性創傷の治癒期間を短縮するために、ナノ型乳酸菌を含む創傷被覆材を開発することです。
創傷治療の現状
日本では、日々100万人以上の患者が医療機関で創傷の治療を受けています。この中でも高齢化の影響を受け、複雑な創傷(例えば褥瘡)が増加傾向にあり、現在、日本の全人口の約3%にあたる400万人が何らかの形で難治性創傷を抱えているとされています。
難治性創傷の多くは、創傷の治癒過程に必要な肉芽組織が不足していることが原因です。肉芽組織は血管やコラーゲン線維から成り立っており、これらの質や量が治癒に大きく影響します。そのため、創傷治癒のためには、これらの組織を促進する新たなアプローチが求められていました。
研究の進め方
本研究では、湿潤環境を保持しながら肉芽形成を促すナノ型乳酸菌を利用した創傷被覆材の開発が焦点となります。このナノ型乳酸菌は、Enterococcus faecalis KH2株として知られ、独自の製造過程を経て水分散性の高い特性を持っています。この特性により、創傷環境を調整するのに非常に適しているとされています。
ニチバン、東北大学、バイオ研の各機関が協力し、研究から製品化に至るまでを一貫して進めます。研究開発をリードするのは東北大学の教授である菅野恵美氏です。彼女は、創傷治療における新たな基準となる製品の開発に取り組んでいます。加えて、編成された研究チームはそれぞれの専門分野の知識を持ち寄り、革新的なソリューションを提供していく所存です。
期待される成果
この研究が進めば、治癒期間を短縮するだけでなく、難治性創傷に悩む患者の生活の質(QOL)の向上にも寄与する見込みです。また、この新しいアプローチは治療にかかるコストの削減にもつながる可能性があります。このようにして、ニチバンと東北大学の共同研究は、日本の医療技術の発展に大きなインパクトを与えることが期待されています。
事業名や今後の展望
本プロジェクトは、令和6年度から令和8年度までの期間にわたり実施されます。具体的な研究開発課題は「難治性創傷の治癒期間を短縮するナノ型乳酸菌を含有した創傷被覆材の創出」とし、研究開発の体制も整っています。これにより、今後の医療分野における新しい製品の誕生に大いに期待が寄せられています。
この革新的な研究が実を結ぶことで、難治性創傷に苦しむ人々の助けとなり、より良い医療環境の実現に貢献することでしょう。今後の動向を注目していきたいと思います。