ナイル・ケティングの新作パフォーマンス「Blossoms – fulfilment」が東京で初公開

ナイル・ケティングの新作「Blossoms – fulfilment」東京で初公開

2025年9月、東京・天王洲の寺田倉庫でナイル・ケティングによる新作「Blossoms – fulfilment」が初披露されます。これは、現代アートのイベント「TENNOZ ART WEEK 2025」内で行われるパフォーマティブ・インスタレーションで、9月11日から15日までの期間限定で開催されます。ナイル・ケティングは、ヨーロッパを拠点に活動を展開するアーティストであり、世界中の美術館やフェスで作品を発表してきた注目の存在です。

本作は、2024年にリスボンで演じられた「Blossoms」のシリーズにあたります。倉庫と都市という空間を舞台に、現代社会において身体や鑑賞行為が持つ意味を問いかける意欲的な作品です。寺田倉庫株式会社は、都心の交通利便性を生かしながら、国際的なアートシーンと国内のアートとの交流の場を提供しています。昨年のイベントには約3万人が訪れ、天王洲がアートシティとしての地位を確立しました。

「Blossoms – fulfilment」は、あたかも天王洲の倉庫空間と対話するように展開されます。ケティングはこれまでの活動を通じて、倉庫を単なる物資の集積所としてではなく、自己表現を磨くための場として捉えてきました。彼が注目するのは、倉庫空間の歴史とそれに対する解釈の交差点です。

この作品は、身体が如何に訓練され、編集され、最終的に「商材化」される過程を表現します。現代社会では、あらゆるものが価値に変換されるなか、ケティングは「鑑賞」という行為自体を儀式的なものとして再考します。日本の歌舞伎や西洋オペラにおける鑑賞者の行為からインスパイアを受けた本作は、現代の私たちの身体やそれに課せられた機能についての新たな視点を提供します。

パフォーマンスは、展示空間を越えて都市に広がり、観客の感覚を揺さぶります。この都市に対する広がりは、鑑賞行為そのものを新しい枠組みに置き換え、観客がどのように体験するかを再考させるものです。

ナイル・ケティングは、自身の作品について「初めて身体を動かした場所は倉庫だった」と振り返っています。そこでの体験は、彼にとって多くの表現の源泉となったのです。彼の最新作は、肉体の動きはもはや過去のものとして捉え、代わりに情報や視線、予感が動く新たなパフォーマンス性へとシフトしています。この作品は、本物と偽物の境界が曖昧に広がる空間での“お花見”のような体験を観客に提供します。このように、鑑賞者は本物と偽物の境界を跨ぎ、新たな感情と体験へと導かれます。