内航海運の持続可能性を支えるAI活用の新たな挑戦

内航海運が直面している課題
日本国内の物流を支える内航海運は、船員や技術者の高齢化、働き方改革への対応、船舶の老朽化といった深刻な課題に直面しています。このままでは、現在の輸送能力を維持することが困難になる恐れがあるため、持続可能なエコシステムの構築が急務です。

このような状況の中で、向島ドック株式会社とノアロジー株式会社がタッグを組み、船舶修繕業に特化したAI利用環境の共創を開始しました。両社の連携により、船舶の生涯データを活用した新たな取り組みが進められます。

何故「修繕データ」が重要なのか

船舶の修繕に関するデータは、船が建造されてから廃船に至るまでの10年以上にわたる重要な情報を含んでいます。しかし、その情報は多くの場合、紙の記録や手書きのデータに頼っており、十分に活用されてきませんでした。この修繕データをデジタル化することで、船舶のトラブルを未然に防ぎ、長持ちしやすい設計へとフィードバックすることが目指されています。

AIを駆使した取り組みの概要

この共同プロジェクトでは、次のようなAI活用のアプローチが取られます：

- 現場データのデジタル化

向島ドックが持つ豊富な現場知見とノアロジーのAI技術を組み合わせ、船舶の生涯データを構造化して蓄積します。その結果、船舶修繕の各工程で得られる実物データと連携し、予知保全につながる解析基盤を構築します。

- 新造船設計へのフィードバック

蓄積された修繕・不具合データをAIで分析し、メンテナンスコストを削減し、機器のトラブルを少なくするような設計提案を行います。これにより、壊れにくい高品質な新造船の供給が可能になります。

- 現場DXチームの育成

単なるツールの導入だけでなく、現場技術者がデータを活用できるように人材育成を行い、自ら業務改善を実施できる組織を目指します。現場の声をしっかりと反映させながら、向島ドックとノアロジーが協力し合っていく過程が重要です。

将来の展望

この協業を進めることで、向島ドックとノアロジーは、海事産業全体に特化したAIエージェントプラットフォームの構築を目指しています。このプラットフォームでは、修繕データに加えて、外部情報も統合・解析し、関係者が有意義に情報を共有できる基盤を構築します。これにより、内航海運の持続可能な未来を支えるための重要な一步となるでしょう。