中干し延長が生物多様性に与える影響を探る実証実験
株式会社Jizokuは、全国的な農業技術の改善に向けて、最近中干しの延長が生物多様性にどのような影響を与えるのかを評価する調査を行いました。この取り組みは特に、環境への影響を軽減しつつ農業生産を行うための一環として重要な意味を持っています。
実証実験の背景
日本では、米の生産において「中干し」という技術が用いられています。この技術は、茎数の抑制や根張りの強化を図るために、水田を一時的に乾燥させるものです。従来の方法では、6月末から7月中旬にかけて中干しを実施してきました。しかし、最近の研究では、中干し期間を1週間延ばすだけで、メタンを生成する菌の活動が抑制され、温室効果ガスの排出が減少することが示されています。このため、カーボンクレジットの創出にも寄与することが期待されています。
一方で、中干し期間の延長が水田の生物、例えばオタマジャクシやヤゴ類に悪影響を与える可能性も懸念されています。こうした状況を踏まえ、生物多様性への影響をしっかりと評価することが求められています。
実証実験の具体的な内容
今回の研究では、栃木県小山市の水田を対象に、具体的な調査を実施しました。実験の目的は、中干しの延長が水田に生息する生物に対してどの程度の影響を及ぼすかを定量的に明らかにすることです。そして、農業生産と生物多様性の保護を両立させるための水管理モデルの提案を目指します。
調査方法は以下の通りです:
1. 農業者と連携し、稲株の茎数を安定させるため、無効分げつを減少させるギリギリまで中干しの開始日を遅らせました。
2. 中干し開始前に、水田の代表的な生物であるトンボの羽化やカエルの上陸状況を確認しました。
3. 通常の中干し終了前に、水田内のトンボやカエルなどの生息状況を調査し、これに中干し延長を続けました。
4. 通常の中干し期間をさらに1週間延長し、同様の調査を行いました。
調査は晴天時の時間帯に実施し、20メートルの水田の幅における生物個体のカウントや、田面での15分間の採集を行いました。これを6月17日、6月30日、7月10日の3回にわたって実施しました。
調査結果
最初の調査である6月17日時点では、以下の結果が得られました。具体的なデータは省略しますが、調査の途中結果としては、中干しによる生物の個体数の減少は確認されました。ただし、中干しの延長期間においては、生物の個体数が著しく減少するという証拠は見られませんでした。このことから、中干しの終了タイミングを延長することは生物多様性に対する悪影響を抑える可能性があると結論づけられました。
さらに、オリザネットの専門知識を背景に、各地域の生物の変化や繁殖サイクルを考慮しながら、中干しの開始日を調整する必要があるとも示唆されました。
今後の展望
今後、この栃木での実証実験をもとに、日本全国の他地域でも同様の調査を展開することが予定されています。各地での結果を踏まえ、水管理と生物多様性のトレードオフを最小化する手法の設計・検証を行い、最適なモデルを確立することを目指します。
今回の実証実験によって、持続可能な農業の促進が期待され、生物多様性の保全と農業生産を両立する未来が切り拓かれることでしょう。
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株式会社Jizoku