新たな糖尿病研究の展開
福島県立医科大学と国立健康危機管理研究機構の共同研究チームは、糖尿病患者の腎臓病リスクを人工知能(AI)を使って予測する新たな手法を発表しました。これは、糖尿病診断時における腎機能の将来の悪化を予測するもので、2025年11月に「Diabetologia」に掲載されることが決まりました。
糖尿病は日本における健康の深刻な問題であり、特に糖尿病関連腎臓病は透析導入の主要な原因とされています。厚生労働省や日本糖尿病学会などが中心となって実施している全国的な取り組みでは、糖尿病性腎症の重症化を防ぐことが求められています。
J-DREAMSプロジェクトの役割
研究に利用されたのは、「J-DREAMS(Japan Diabetes compREhensive database project based on an Advanced electronic Medical record System)」という診療録直結型の全国糖尿病データベースです。このプロジェクトは、日本糖尿病学会の支援で運営されており、糖尿病治療の質を向上させるための重要な基盤となっています。
糖尿病と腎機能低下の関係
糖尿病患者の中には、初期状態で腎機能が既に低下している説明が難しい事例が多く、腎機能が悪化してから認識されることがしばしばあります。この問題を克服するため、研究チームはまだ腎臓病を発症していない糖尿病患者に対して、早期に自分の病態を把握できる方法を模索しました。
研究では、全国の糖尿病患者1万人以上のデータを分析し、糖尿病を5つのサブタイプに分類しました。具体的には、以下のようなタイプが存在します:
- - SAID(重症自己免疫性糖尿病): 若年発症
- - SIDD(重症インスリン不足糖尿病): インスリン分泌低下
- - SIRD(重症インスリン抵抗性糖尿病): インスリン効きが悪く肥満
- - MOD(軽症肥満関連糖尿病): 合併症が少ない肥満型
- - MARD(軽症加齢関連糖尿病): 高齢で発症
サブタイプによるリスクの違い
特に重要な発見は、SIRDサブタイプの患者が腎臓病のリスクが高いことです。サブタイプごとに異なる原因が明らかになり、同じ糖尿病でもそれぞれの特徴に基づいて異なる治療や予防策が必要であることが示されました。
個別化医療の可能性
この研究は、糖尿病の診断を従来の一括りからサブタイプに分類することで、患者ごとに最適な治療法や予防策を提供できる可能性を示しています。これは、今後の「個別化医療」の実現に向けた重要な一歩です。
研究チームは、患者一人ひとりの糖尿病のサブタイプを迅速に判定し、適切な対策を講じることで、より効果的な治療を実現することを目指しています。糖尿病治療の新たなステージへの転換が期待される中、今後の進展に注目が集まります。