経費精算の手戻り問題が90%以上の企業で深刻化
株式会社LayerXが実施した最新の調査によると、驚くべき実態が明らかになりました。経費精算を行う企業の90%以上が差し戻しや修正を恒常的に経験しており、その発生率は平均して申請全体の40%以上に達しています。このような状況は、経理担当者にとって深刻な負担をもたらしているだけでなく、企業全体の経営効率にも大きな影響を与えています。
調査の背景と目的
近年、インボイス制度や電子帳簿保存法などの法令に対応する必要性が高まり、企業独自の複雑な経費精算規程が増加しています。これにより、経費申請の処理がますます難しくなってきています。また、迅速な経営判断を支えるための「決算早期化」が多くの企業にとって優先事項となりつつあります。しかし、その結果、差し戻しや修正といった手戻りが経理部門で頻発することから、決算早期化が阻害されていると指摘されています。
この調査は、経理担当者が抱える手戻りの主要原因を明らかにし、新たな解決策を模索することを目的に実施されました。
差し戻し・修正の発生状況
調査によれば、申請の差し戻しや修正が1件以上発生した企業は90.0%、さらに修正が発生した企業は93.2%に達しています。これは経費精算が特定の企業のみに見られる問題ではなく、業界全体に共通する課題であることを示しています。
その原因は何か?
特に、これらの手戻りの理由は「自社規程に関する知識不足や判断ミス」であるとされており、単純な入力ミスや計算ミスよりも、複雑なルールの理解が障害になっています。具体的には、「領収書・証憑の不備(46.7%)」や「日付・用途の記載ミス(40.2%)」が多くの問題を引き起こしているとされています。
心理的な負担の軽減が求められる
調査結果からは、単に業務の効率化を求める企業だけでなく、経理担当者の心理的負担を軽減することが求められていることが浮き彫りになりました。「修正対応が終わるまで常に気になる」という心理的負荷や、「提出者との関係が悪化する可能性がある」といった懸念が上位に挙げられています。これにより、手戻り削減が従業員の働きやすさを向上させる重要な施策であることが確認されました。
教育による対策の重要性
調査において企業が手戻り削減を図るために実施している取り組みの大半は、「詳細なマニュアルの整備」や「定期的な説明会・研修」に集中しています。これは、従来の経費精算システムが自社規程を機能的に処理できていないために、人手による教育が依然として重要な手段であることを示しています。
決算早期化の副作用
さらに、決算締め日が早い企業ほど差し戻しや修正の発生割合が高まる傾向にあることも明らかになりました。決算早期化の利点がある反面、修正による経理業務の負荷が増大する可能性があります。
まとめと今後の展望
LayerXの調査により、経費精算業務にかかるストレスがいかに広がっているかが実証されました。この問題を解決するためには、心理的負担の軽減を図る施策や、教育の強化、そして新たなテクノロジーの導入が鍵となるでしょう。AI技術を活用した経費精算の効率化も期待されており、今後の取り組みに注目が集まります。