世界初!極小物体距離計測を実現する京セラ「AI測距カメラ」開発
京セラ株式会社は、これまで測定が困難であった極小物体の距離と大きさを計測できる「AI測距カメラ」を開発しました。これは、1mmの光沢反射する極小部品を測定可能なステレオカメラとしては世界初※1となります。
この開発の背景には、世界共通の課題である労働力不足があります。特に日本は、高齢化社会の影響で労働力不足が深刻化しており、生産性向上が急務となっています。そこで注目されているのが、人間の目の代わりとなるビジョン・センシング技術を活用した生産現場の自動化です。
京セラが開発したAI測距カメラは、対象物体までの距離10cmで計測誤差0.1mmという高精度を実現し、従来のステレオカメラでは計測が難しかった1mm程度の極小物体や透明物体・反射物体の距離を正確に測定できます。これにより、製造現場での選別や判別、医療現場での高精度な計測、物流や小売り現場での搬送ロボットなど、幅広い分野での活用が期待されています。
AI測距カメラの特長
1. 超近距離センシングを可能にする独自のステレオカメラ構成
AI測距カメラは、一つのセンサーに二つのレンズを搭載した独自のステレオカメラ構成を採用しています。従来のステレオカメラでは、二つのレンズ間の距離が広く、近距離の物体の視差が小さいため、正確な距離を計測することが困難でした。しかし、AI測距カメラはレンズ間の距離を極めて狭めた超狭基線長を採用することで、近距離でも視差を正確に検知し、極小物体の大きさを計測することを可能にしました。
2. AIステレオビジョンアルゴリズムによる高精度化
AI測距カメラは、AIのステレオビジョンアルゴリズムを採用することで、高精度な距離計測を実現しています。高精度な距離計測には、大量の学習データと膨大な学習時間が必要となりますが、京セラは以下のような技術開発に取り組み、学習コストの削減に成功しました。
CGによる学習データ生成技術:データ収集コストを削減するため、コンピュータグラフィックス(CG)を用いた学習データ生成技術を導入しました。
正解データを必要としない事前学習技術:中部大学 藤吉教授との共同開発により、最先端のAI技術を導入し、独自に改良を加えた正解データを必要としない事前学習技術を採用しました。この技術は、新規性および有効性が国際的に認められ、コンピュータビジョン領域のトップクラスカンファレンスである国際会議BMVC 2024 (The 35th British Machine Vision Conference)にて採択されました。
これらの技術により、AI測距カメラは従来の単眼距離計測に比べ、10倍の高精度を実現し、透明物体や反射物体などの計測にも対応できるようになりました。
今後の展開
京セラは、AI測距カメラを製造現場、医療現場、物流、小売りなど、さまざまな分野で活用することで、社会全体の労働力不足解消に貢献していくことを目指しています。例えば、工場では極小部品の選別を行うロボットに、医療現場では高精細な人体計測や手術器具の認識に、物流現場では搬送ロボットの効率化などに活用されることが期待されています。
AI測距カメラは、人間の視覚機能を拡張する革新的な技術であり、今後のさらなる発展が期待されます。