富士通が開発したマルチAIエージェントセキュリティ技術の全貌

富士通が発表した新しいマルチAIエージェントセキュリティ技術は、企業や公共機関のITシステムにおけるセキュリティ強化に向けた重要な取り組みです。これにより、脆弱性を悪用する攻撃や生成AIを狙った新たな脅威に対して、より効果的なプロアクティブな対策が実現可能になります。

この新技術は、複数のAIエージェントが協力し合うことで構成されています。具体的には、マルチAIエージェント連携技術、セキュリティAIエージェント技術、生成AIセキュリティ強化技術の3つから成り立っています。これにより、さまざまなスキルを持つAI同士が情報を共有し、協力して行動することが可能となっているのです。

背景と必要性

近年、ITシステムへの攻撃がますます巧妙化し、毎年2万件を超える脆弱性が公開されています。セキュリティ専門家やIT管理者が手作業で対策を講じるには限界があり、企業は逐次おこなわれる攻撃に常に追われている現状にあります。この点において、富士通のマルチAIエージェント技術は、迅速かつ効果的な対策を自動で実施できる点で非常に大きな意味を持っているのです。

技術の構成要素

1. マルチAIエージェント連携技術
この技術は、組織や拠点に官するAIエージェントを透過的に連携させることを可能にします。データ秘匿やプライバシー保護の課題にも対応しており、AIエージェント同士が協力的に動作するための基盤を提供します。

2. セキュリティAIエージェント技術
プロアクティブなセキュリティ対策を実現するための基本的なAIエージェントが導入されます。この技術は、攻撃シナリオを生成する「攻撃AIエージェント」、リスクプロファイルに基づいた防御策を提案する「防御AIエージェント」、サイバーツイン上でシミュレーションテストを行う「テストAIエージェント」から成り立っています。これらのAIエージェント間の協力を通じて、企業は新たな脆弱性への備えを強化できます。

3. 生成AIセキュリティ強化技術
生成AIの普及に伴う新たな攻撃に備えた技術です。これには、脆弱性を特定するスキャナーや攻撃を自動防御するガードレール機能が含まれています。これにより、セキュリティ専門家でなくても、複雑な評価や対策が可能になります。特に、生成AIの取り扱いに関して、安心・安全に運用できる基盤を提供することが期待されます。

今後の展望

この技術の実用化には、2024年から技術実証が始まり、2025年にはトライアル提供が予定されています。この新たな試みは、世の中のデジタルセキュリティを向上させ、安心してAIを活用できる環境を提供することを目指しています。

また、今後はさらなるセキュリティ業務の自動化や、生成AIを用いた新たな脆弱性への対策も進めていく計画です。富士通は、本技術を通じて、より信頼性の高いデジタル社会の実現に貢献していくことでしょう。