出版業界の苦境
2025-01-23 11:11:25

出版業界の厳しい現実、66.1%の企業が業績悪化を報告

株式会社帝国データバンクの調査によると、2023年度において出版業界の66.1%の企業が「業績悪化」を経験したことが明らかになりました。この結果は、過去最大の割合を示しています。調査は新聞発行を除いた675社の出版社に対して行われ、業績が判明した企業のデータを分析したものです。

この調査期間は2023年4月から2024年3月までの決算期にわたり、出版業界全体の収益状況を含む厳しい経済環境が色濃く反映されています。全国出版協会および出版科学研究所による推計では、2023年の紙と電子を合わせた出版物の販売金額は約1兆5,963億円、前年比で2.1%の減少を示しています。この販売金額は2年連続で前年割れとなっており、業界の景気後退を示唆しています。

業績悪化の要因として挙げられるのは、原材料費や物流費の高騰、さらには消費者の活字離れや少子高齢化などの社会的背景です。具体的には、印刷用紙やインクのコストが増加している上、運送費なども上昇しており、この影響で多くの出版社が厳しい経営を強いられています。特に、雑誌媒体の販売が大きく落ち込み、多くの出版社が赤字を抱える状況にあります。

実際、2023年度に発表された675社の損益状況データによると、247社が赤字を計上しており、その割合は過去20年で最も高い36.6%に達しました。また、前年よりも減益となった企業を含めると、業績悪化の割合は66.1%に達し、業界の厳しさが浮き彫りになっています。

このような状況の中、コロナ禍の影響で一時的に需要が高まった電子書籍市場は2023年に前年比6.7%の増加を見せており、2024年上半期も前年同期比で6.1%の伸びを記録しています。電子出版の約9割を占める電子コミックが好調で、アニメやゲームとの連携で市場が拡大しています。しかし、その反面で著作権侵害や海賊版サイトの問題も浮上しており、各社はIPビジネスやデジタル広告への多角化を模索しています。

デジタルによる出版の効率化は今後更なる焦点となるでしょう。大手のKADOKAWAは2025年にソニーグループとの資本業務提携を発表しており、デジタルコンテンツを強化して海外市場への展開を加速させる予定です。一方で、中小出版社は読者ニーズに応じた特色ある企画や書店との関係強化が求められています。

総じて、今後の出版業界はデジタルシフトを進める必要があり、それに伴う新たな戦略を設計していくことが急務なのです。流通の効率化や、消費者のニーズに即した出版物の提供が求められる中、業界全体の再構築が必要とされる時期が訪れています。


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