NTTグループとバイオームによる新技術の開発
日本電信電話株式会社(NTT)をはじめとする6社は、衛星画像データを活用した植生と生物の広域推定技術の開発に着手しました。この技術は、生物多様性のモニタリングを効果的に支援することを目的としており、現代の環境問題にも対応する新たな手法として注目を集めています。
1. 生物多様性の現状と背景
今日、世界の経済活動の約半分は森林や土壌などの自然資本に依存していますが、生物多様性の劣化は急速に進行しています。このため、生物多様性の保護に向けた国際的な取り組みが進められており、特に2022年には昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択され、ネイチャーポジティブ、つまり自然環境の回復を目指す動きが注目されています。
日本国内でも「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」が策定され、企業や行政、一般市民による生物多様性の保全活動が促進されています。しかし、現在のモニタリング手法の多くは、公開データの精度や更新頻度が不足しており、実際の現地調査は高コストかつ難度が高いことが課題です。これを解決するために、NTTグループとバイオームが連携して、新技術の開発を始めることになりました。
2. 実証実験の概説
このプロジェクトでは、衛星データとバイオームが持つ850万件以上の生物データを組み合わせ、高頻度でのデータ収集と広域推定を行います。具体的な実証実験は、NTTドコモの「ドコモ泉南堀河の森」(大阪府泉南市)とアサヒグループジャパンの「アサヒの森」(広島県庄原市)の2地点で行われます。
大阪府泉南市では2025年1月から、森林や周辺生態系の把握が目的とされ、特に自然共生サイトとして認定されたエリアでの生物多様性監視が検証されます。一方、アサヒグループジャパンでは、同年4月から「アサヒの森」でビジネスユースケースとしての広域推定技術の確立に注力します。
3. 各社の役割
このプロジェクトで各社の役割は明確です。NTTは全体の統括を行い、バイオームが生態系データを提供。NTT Comはフィールド実証を実施し、NTTコムウェアがデータ解析を行い、NTTデータは高解像度の衛星画像データを提供を担当します。NTTドコモはフィールドでの実証に関与し、ビジネスユースケースの検証も兼任しています。
4. 未来の展望
今後は、自治体や企業が進めるランドスケープ戦略の策定や、ネイチャーポジティブ経営の転換を支援することが期待されています。また、これに伴い、高精度かつ高カバレッジな生物多様性プラットフォームの構築を目指し、より広範なデータ収集と共に統合報告書作成時のサポートが進められます。
さらに、NTTドコモ・ベンチャーズはバイオームに対して出資を行い、両者の連携を深めることで、新しいビジネス価値の創造を目指します。これにより、私たちの自然環境を守り、持続可能な社会を築くための大きな一歩となるでしょう。