テックドクター、双極性障害におけるデジタルバイオマーカーの探索研究を発表
株式会社テックドクターは、2025年7月に開催される第22回日本うつ病学会総会において、双極性障害患者を対象にしたデジタルバイオマーカーに関する研究成果を発表しました。この研究では、ウェアラブルデバイスを通じて集めた生体データを用い、双極性障害におけるうつ状態や躁状態のモニタリング方法を検討しています。
研究の背景と目的
双極性障害は、うつ状態と躁状態を行き来する精神疾患です。患者の症状管理には、客観的でリアルタイムな状態把握が不可欠ですが、これまで主観的な評価に頼るケースが多いのが現状です。そこで、テックドクターは、ウェアラブルデバイスから得られる日常的な生体データを活用した新たなモニタリング手法の確立を目指しました。
研究概要
この研究は、特定の患者におけるデータのパターンを分析することを目的としています。具体的には、1名の40代男性患者を対象に、GoogleのFitbit Charge6を使用して心拍数、睡眠、活動量といった生体データを収集し、症状記録アプリeMoodsを通じて主観的な気分評価も行いました。気分状態は次の4つに分類され、1から4のスコアで評価されます。
- - 抑うつ気分(DM)
- - 気分高揚
- - 易刺激性
- - 不安
研究結果
研究の結果、睡眠中の心拍変動(HRV)指標の一つであるRMSSDが、抑うつ気分スコアの上昇に先立って低下する傾向を示しました。具体的には、対象者の観察期間中にRMSSDの異常値が14日間確認され、そのうち12日間では、その後1週間以内に抑うつ気分の自己評価が上昇しました。
特に重要な点は、対象者がHRVの結果を知らずに気分状態を記録していたことです。このことによって、データ間の相関がより信頼性のあるものとなりました。研究は、客観的データと主観的評価との関係性を明らかにし、双極性障害における気分変動の予測可能性を示唆しています。
社会的意義と今後の展望
本研究はまだN=1での探索的な段階に留まっていますが、日常生活で得られるウェアラブルデータが、主観的な気分評価との関連を示す可能性を秘めています。将来的にはより多くの症例を対象にした大規模な研究を行い、抑うつ気分以外の症状指標との関連性も検討していく予定です。
テックドクターは、引き続き精神疾患領域においてデジタルバイオマーカーの開発を進め、個別化医療の実現に向けた努力を続けていきます。これらの研究は倫理審査委員会の承認を得て、対象者の同意を得て実施されています。
東京で進化する精神疾患の研究
テックドクター本社は東京都中央区に所在し、同社は「データで調子をよくする時代へ」というビジョンのもと、ウェアラブルデバイスから得られる生体データを基にしたデジタルバイオマーカーの開発を行っています。医療や製薬、研究機関との連携を通じ、AI医療の実現を目指す取り組みが進められています。
研究成果をはじめ、今後の発展に期待がかかる中、双極性障害に関する新たな知見がどのように医療に寄与していくのか、引き続き注目が集まります。