常石造船、水素燃料タグボート進水で脱炭素社会に貢献

常石造船が描く未来の海運の姿

広島県福山市に本社を置く常石造船株式会社は、3月28日に国内初の水素燃料タグボートを進水しました。この新しい船舶は、環境保護とカーボンニュートラルの実現をテーマに設計され、近年注目を集めている水素エネルギーを活用しています。進水式が行われた常石工場には、国内外の業界関係者が集まり、その将来に期待を寄せました。

水素燃料のメリットと技術的背景

本船は、高出力な水素混焼エンジンを搭載し、船体にはJFEスチールのグリーン鋼材「JGreeX」を使用していることが特筆に値します。従来の化石燃料を使った船舶と比べて、約60％のCO₂排出削減を実現しています。これは、地球温暖化防止への大きな一歩です。また、水素燃料は燃焼時にCO₂を排出せず、クリーンなエネルギー源としての可能性が期待されています。

高い運航性能と安全性

実際、タグボートは大型船舶の離着岸をサポートする役割を果たします。本船は、2基の12気筒水素混焼エンジンを備え、4,400馬力の出力を誇ります。これにより、必要な操作性と高いエンジン性能を兼ね備えています。さらに、約250kgの高圧水素ガスを貯蔵する設備が整い、水素燃料が使えない場合でもA重油を利用して航行できるため、高い安全性が確保されています。

環境保護に向けた取り組み

常石造船は、「ゼロエミッション船プロジェクト」にも参画しており、国際的なレベルでの環境保護を目指しています。このプロジェクトは、日本財団が中心となり、2050年を見据えてカーボンニュートラルを実現することを目的としています。本船の開発は、こうした取り組みの一環であり、海運業界全体における脱炭素化に寄与すると期待されています。