『ドクトル・ガーリン』の魅力
2025年8月27日に発売されるウラジーミル・ソローキンの新作『ドクトル・ガーリン』。この作品は、近未来の世界を舞台に、戦争と伝染病が支配する社会を描き出しています。ソローキンは、ポストモダンに挑戦する作家として世界的に有名で、その独自の視点や豊かな想像力が評価されています。
作品の概要
『ドクトル・ガーリン』は、国家が分裂し、断片化してしまった未来の世界を探求します。作中には、ウラジーミル・プーチン、ドナルド・トランプ、アンゲラ・メルケル、シンゾー・アベなど、現代で知られる各国の指導者たちが描かれ、彼らは異形のクローンとなって登場します。これらのキャラクターは、様々な精神的な問題を抱えた存在であり、彼らを治療するのがサナトリウムの院長であるドクトル・ガーリンの役割です。
物語は、アルタイ共和国への核攻撃を契機に、ガーリンが元G8首脳のクローンたちとともに北に向かう決意を固めるところから始まります。彼らが向かう道中、身の丈3メートルを超えるバイオ巨人や、「自由」と名乗るアナーキストキャンプ、帝政ロシアの貴族のように生活する伯爵の家族、そしてカザフスタンからの麻薬販売キャラバンなど、様々な人間的存在と出会うことになります。
様々な存在との遭遇
戦争は日常化し、ガーリン自身も愛する人を失い、ミュータントの収容所に囚われるという過酷な経験をします。しかし、その中で彼はアルビノの女性や、「白いオオガラス」という未知の存在に対する崇拝を通じて、苦しい状況を乗り越えていくことになります。彼の旅は、愛や希望を追い求める物語であり、その先には感動的なクライマックスが待ち受けているのです。
目次の紹介
本書の構成は以下の目次で示されており、各章が異なるテーマや出来事を掘り下げています。
- - 第一部:サナトリウム『アルタイ杉』
- - 第二部:北へ
- - 第三部:バルナウル
- - 第四部:マトリョーシカ
- - 第五部:空を向く目
- - 第六部:白いカラス
- - 第七部:白いオオガラス
ソローキンについて
ウラジーミル・ソローキンは1955年にロシアで生まれた作家であり、70年代後半からモスクワのコンセプチュアリズム運動に関与してきました。彼の作品は、政治や社会に対する鋭い視点を持ち、風刺的な要素が強く、時には衝撃的な描写が施されています。代表的な著書には『氷』や『吹雪』などがあり、これらの作品でも高い評価を受けています。
訳者紹介
本書の訳者、松下隆志は北海道大学で文学を学び、現在は岩手大学で教員を務めています。ロシア文学の専門家として知られ、ソローキンの作品を多く翻訳してきました。彼の訳は、原作の持つ独特な雰囲気をしっかりと日本語に表現しています。
書誌情報
『ドクトル・ガーリン』は、四六変型判の上製本で472ページからなり、定価は5,720円です。ISBNは978-4-309-20932-6です。今後、発表されるこの作品がどのような評価を受けるのか、非常に楽しみなところです。
『ドクトル・ガーリン』は、ソローキンの新しい挑戦を示す作品であり、近未来の社会における愛と希望を描いています。ぜひ、手に取ってその世界を体感してみてください。